インド大使館、「人材活用」テーマにセミナー開催
(インド、日本)
調査部アジア大洋州課
2026年06月04日
日本企業によるインド進出の後押しを目的としたセミナー「第4回インディア・コネクト~高度成長するインドへの進出の『カギ』とは~」(主催=在日インド大使館、パートナー=住友不動産)が5月26日、東京の同大使館イベントホールで開催され、インド進出を目指す企業担当者を中心に約180人が参加した。「インド人材活用」をテーマとしたトークセッションや事業プレゼンを通じて、インド人材の強みや、進出を目指す企業が認識すべき課題など、示唆に富んだ知見が共有された。
セミナー前半では、マドゥ・スーダン・ラビンドラン首席公使の主催者あいさつを皮切りに、官民の登壇者による講演・事業プレゼンで政策や現地事業の取り組みが紹介された。後半の「日本企業の未来を拓(ひら)くインド高度人材戦略」と題したトークセッションでは、スズキの鮎川堅一氏(参与)、ITエンジニアの若狭建氏(合同会社桜文舎代表社員CEO、元メルカリ執行役員GroupCTO)、第一ネオ生命のラジャン・ナンダ氏(常務執行役員兼第一ライフテクノクロス執行役員)が登壇し、それぞれの経験を基に、日印間の人材交流に必要な取り組みについて考えを語った。
メルカリがインドで設立したグローバルセンター・オブ・エクセレンス(CoE)で責任者を務めてきた若狭氏は、CoEの立地としてインドを選んだ経緯について、「米国中心のIT業界ではインド人エンジニアが多く、ビッグテック企業がインドに拠点を構えている」などの背景を説明。「質と量」で選ぶと、インドでの設立が当然との認識を示した。
一方、インドのIT業界での経験を経て、日本の金融保険会社のDX推進役を担うナンダ氏は、メルカリなどIT業界がインド展開に臨む一方で、日本の金融機関のDX化が進んでいない現状に言及。「インド人材側だけでなく、企業側でも採用する環境をつくっていくことが大切」「日本人同士で理解できることでも、インド人には理解されない。文化ギャップを埋めていくことからスタートすべき」と、文化的コンテクストの差異を踏まえた相互理解の重要性を訴えた。また、こうした議論を受けて若狭氏は、日本企業が「インド人から選ばれる企業」になるためには「従業員価値提案(EVP)」を明確にすることが大切と提言した。
インド進出以来44年のスズキで長年にわたって現地法人代表を務めてきた鮎川氏は、「競争の激しいインド社会にあって、アピール力を備えていることがインド人材の強み」とする一方で、「ジョブホッピングなどの課題を踏まえ、人材が定着していくためには会社が変化に向けて進んでいくメッセージを伝えるべく、採用制度や人事評価など環境づくりに取り組むことが大切」との考えを示した。
セミナー後には交流会が開催され、参加者間で活発なネットワーキングが行われた。不動産関連企業の参加者からは「進出に向けてネットワークを広げるためセミナーに参加した。インドへの関心の高まりを肌で感じた」との声が、またベンチャー投資を手掛ける参加者からは「インドでの生鮮物流事業への投資を進めている。日本の技術に期待がかかる分野だ」といった声が聞かれ、それぞれの立場からインド市場にアプローチする様子がうかがえた。世界で注目されるインド人材をパートナーとして事業展開しようとする企業には、現地訪問による市場視察や人材交流の経験はもちろん、本イベントで提言された課題を念頭に、文化的差異を乗り越える相互理解への取り組みと柔軟な経営体制の構築が求められる。
主催者を代表してあいさつしたマドゥ・スーダン・ラビンドラン首席公使(インド大使館提供)
トークセッションの様子。右からナンダ氏、若狭氏、鮎川氏(ジェトロ撮影)
(山本佳典)
(インド、日本)
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