カナダ政府、新国家AI戦略「AI for All」を発表、導入拡大と経済成長を推進
(カナダ)
トロント発
2026年06月09日
カナダ政府は6月4日、新たな国家人工知能(AI)戦略「全ての人にAIを(AI for All)」を発表
した。同戦略は、信頼・機会・主権の基本原則のもと、6つの柱で構成され、法整備や投資、人材育成などを通じて、責任あるAIの開発・活用を促進するとともに、国民の信頼構築と機会の創出、主権の強化を通して経済成長の実現を目指す方針が示された。
戦略の具体的な内容として、企業におけるAI導入率を現在の約12%から2034年までに60%へ引き上げるほか、生産性向上を通じた約2,000億カナダ・ドル(約23兆円、Cドル、1Cドル=約115円)のGDP成長を見込む。また、AI導入により最大25万人の新規雇用創出を目標としている。さらには、AIの基礎的な理解や活用能力の向上に向けた教育の拡充や若者の就業機会の創出、国内産業の競争力強化に加え、カナダ主導によるAIの開発や導入ができるよう、計算能力やデータ基盤などの確立といった施策が盛り込まれている。マーク・カーニー首相は、カナダは優れた人材を有する一方で、AIの本格導入においては遅れがみられるとの認識を示した。その上で、人材流出や産業競争力の低下、AIの重要領域が国外のインフラや技術に依存するリスクを課題として指摘した。
これに対し、専門家や政策関係者からは、規制や実施の具体的内容が不十分である点や、AIを巡る法整備が今後に委ねられている点などが指摘され、AIが雇用を奪う懸念もある中、雇用創出などの効果も不確実性が高く、政策の実効性に課題があるとの懸念が示された(「グローブ・アンド・メール」紙6月4日)。
本戦略の策定に当たってカナダ政府は、2025年10月1~31日までの30日間にわたり全国的なパブリックコメントを実施。収集した1万1,000件以上の意見に加え、学界・産業界・NGOなどの代表28人で構成される「AI戦略タスクフォース」による提言も踏まえて、新戦略が策定されたとしている。
(井口まゆ子)
(カナダ)
ビジネス短信 5eb3e1d91b5a64cf





閉じる