中東のエネルギー投資、情勢悪化も天然ガス・低排出技術が下支え、IEA報告

(世界、中東、サウジアラビア)

調査部中東アフリカ課

2026年06月04日

国際エネルギー機関(IEA)は5月28日、「世界エネルギー投資2026外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。2026年の世界のエネルギー投資額は前年比5%増の3兆4,000億ドルと見込む一方、中東情勢の悪化により、エネルギー安全保障や供給網の信頼性への懸念が高まり、各国・企業は投資戦略の見直しを迫られていると指摘。IEAは、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を背景に、供給網や輸送ルートの多様化が進んでおり、特にアジアや中東でその影響が大きいとした。

このうち中東地域では、情勢悪化により今後のエネルギー投資に関する不確実性が高まる一方、天然ガスと低排出技術が投資動向を下支えしている。2026年の中東のエネルギー投資(推計)はGDP比で6%と世界平均(3%)を上回り、1人当たり投資額も650ドルと世界平均(396ドル)を上回る。一部の国の油田事業は情勢悪化の影響を受けているものの、操業の維持に向けた支出は継続しており、大幅な投資の減少には至っておらず、石油・天然ガスの上流部門への投資は2026年に前年比約1%減にとどまる見通しだ。

中東では電力需要が2000年以降で3倍以上に拡大する中、ガス火力の増強に加え、太陽光など低排出電源(注1)への投資が進んでいる。低排出電源への投資は約100億ドル規模に達し、サウジアラビアなどの大規模再生可能エネルギー事業がこれを牽引する。また、電力供給の安定化に向けた送配電網への投資は100億ドル、蓄電分野でも35億ドルへの拡大が見込まれる。

中東地域では分野別にみるとエネルギー投資に占める化石燃料供給への投資比率が引き続き高いものの、2026年(推計値)には2015年比で低下している。一方、化石燃料発電、最終需要(注2)、低排出電源・供給(注3)の比率は拡大している。また、2026年(推計)の送電網・蓄電への投資比率は2015年比で低下しており、世界平均(19%)と比較すると低い水準にある。

中東地域における2026年の投資推計額と分野別構成比は次のとおり(かっこ内は2015年との比較)。

  • 化石燃料供給:1,390億ドル、構成比72%(2015年比4ポイント低下)
  • 化石燃料発電:160億ドル、8%(同1ポイント上昇)
  • 送電網・蓄電:130億ドル、7%(同4ポイント低下)
  • 最終需要:130億ドル、7%(同4ポイント上昇)
  • 低排出電源:100億ドル、5%(同2ポイント上昇)
  • 低排出供給:20億ドル、1%(同1ポイント上昇)

(注1)低排出電源:太陽光・風力発電など、二酸化炭素(CO2)排出が少ない電源

(注2)最終需要:産業・建物・輸送などエネルギー消費部門。

(注3)低排出供給:水素やバイオ燃料など、低炭素燃料の供給。

(加藤皓人)

(世界、中東、サウジアラビア)

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