ダッカ日本商工会が移転価格税制セミナーを開催、今後の執行強化に備えた対応が必要に
(バングラデシュ)
ダッカ発
2026年06月02日
ダッカ日本商工会は5月14日、移転価格税制セミナーを開催した。バングラデシュでは、2023年所得税法に基づき移転価格税制が導入されているが、制度運用は発展途上にあり、今後の執行強化に備えた対応が重要だ。セミナーに登壇した東京コンサルティングファーム(本社:東京)の安倍史紘ダッカ所長は講演の中で、バングラデシュ進出日系企業の増加に伴い、関連企業間の国際取引に対する税務管理の重要性が高まっていると認識を示した。
移転価格税制は、海外の関連企業との取引価格(移転価格:Transfer Price、TP)を通常の取引価格(独立企業間価格)に引き直して課税する制度であり、商品の売買に加え、サービス提供、ロイヤルティー、利息など幅広い取引が対象となる。特に、親会社と子会社間で価格を調整することにより、利益を国外へ移転する行為を防止し、各国における適正な課税を確保することが目的とされる。
同制度の適用対象となる「関連企業」は、単なる資本関係に限らず、議決権の25%超保有や経営支配など、実質的な支配関係の有無によっても判断される。このため、多くの日系企業にとっても対象となり得る点に留意が必要だ。
コンプライアンスの面では、主に(1)取引の妥当性を示す文書の保存、(2)一定規模以上の国際取引に対する会計士レポートの提出、(3)国際取引明細書(TP Return)の提出、の3点が求められる。中でもTP Returnは、関連企業との国際取引がある場合には毎年提出が必要であり、最も基本的かつ重要な対応とされる。また、罰則規定は厳格であり、TP Returnの未提出や不備がある場合には、国際取引額の最大2%に相当するペナルティーが課される可能性がある。利益ではなく取引総額に対して課される点が特徴で、企業にとって大きなリスク要因となる。
一方で、実務の現場では制度理解が十分に進んでいないとの指摘もある。現時点で対応しているのは主に大規模外資系企業に限られ、当地の税務当局や会計士などの専門家においても運用経験が蓄積途上にある。そのため、実際の追徴課税事例は限定的とされるが、今後は税務申告全体の厳格化に伴い、移転価格税制についても確認が強まる可能性が高い。
さらに、二重課税を回避するための相互協議や事前確認制度についても、当地における実務上は十分に機能していないとされ、企業は現地当局との直接対応を迫られるリスクがある。このような環境下では、客観的なデータに基づく価格設定の根拠を整備するなど、自社での準備が不可欠となる。
企業においては、まず自社の取引が同制度の対象となるかを確認し、第三者取引と比較して合理的な価格設定であることを説明できる体制を整備することが求められる。特に、輸出加工区(EPZ)および経済特区(EZ)進出企業、支店・プロジェクト拠点、IT・サービス企業などは、取引形態に応じたリスクを把握し、早期に対応を進める必要がある。
(新居大介)
(バングラデシュ)
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