米USDA、食料支援プログラム認定店に生鮮食品の拡充を義務化、「食の砂漠」問題軽減
(米国)
ニューヨーク発
2026年05月11日
米国農務省(USDA)は5月7日、低所得者向け食料支援プログラム(SNAP、注1)の認定小売店に対し、より多様な生鮮食品や栄養価の高い食品を常備することを義務付ける規則を発表
した。この新規則は、低所得層の食生活の質を向上させ、米国が抱える「食の砂漠(Food Desert、注2)」問題の軽減に向けた狙いがある。
全米には4,200万人以上の低所得者(全人口の約1割強)がおり、SNAPはそれを支える重要なセーフティネットだ。しかし、受給者が日常的に利用するSNAP認定の小規模店舗やコンビニエンスストアでは、保存のきく加工食品やスナック類が棚の大半を占め、栄養価に対する懸念が長年指摘されていた。発表された規則は、受給者が居住地域にかかわらず、新鮮な食材を入手できる環境を整備するため、小売店の販売要件を強化するものだ。ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は、「この規則は、『本物の食品(栄養価の高い食品)』へのアクセスを再構築するもの」だと述べ、小売り側の責任を明確化することで、受給世帯の利便性と健康を同時に高める改革であるとコメントした。
今回の改正により、SNAP認定を受ける全ての小売店は、野菜・果物、乳製品、肉類、穀物の主要4カテゴリーにおいて、カテゴリーごとに複数(少なくとも7種類)以上の品目を常に在庫として維持することが義務付けられる。しかし、基準の厳格化に伴う生鮮食品の拡充は、小規模店舗にとってコールドチェーンの整備や廃棄ロスの増大といった新たな運営コストが発生することになる。こうした負担は、受給者の健康改善を促す一方、地域唯一の食の拠点である店舗がプログラムから脱退するリスクを抱えており、十分な支援がなければ、移動手段を持たない受給者にとって利用可能な店舗が減少する可能性があるという深刻な事態も懸念される。
なお、本規則は2026年秋に施行される予定で、USDAは今後数週間以内に小売店向けの具体的な運用ガイダンスを公表する方針だ。国民の健康向上と現場の運営維持をどう両立させるか、小規模店舗への支援策や柔軟な運用を含めた制度設計が今後の焦点となる。
(注1)低所得者に対し電子給付カード(EBTカード)を通じて食料購入費を補助する制度であり、利用可能な店舗はUSDAの認定を受ける必要がある。
(注2)低所得者が多く、生鮮食材を安価に購入できる店舗へのアクセスが制限されている地域を指す社会問題。
(樫葉さくら)
(米国)
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