ムンバイで大規模スラム撤去、鉄道拡張に向け用地確保が目的

(インド)

ムンバイ発

2026年05月22日

インド西部ムンバイで5月19日、鉄道当局による大規模なスラム撤去が開始された、と現地紙が報じた(「フィナンシャル・エクスプレス」紙5月19日)。対象はバンドラ駅東側のガリブ・ナガル地区に立地する違法建築物で、西部鉄道(Western Railway)が主体となり、駅周辺の用地確保を目的に実施している。同地区における不法占拠問題については、2017年以前に公共施設法に基づく退去命令が発出されて以降、住民側の提訴などにより、約9年にわたり司法審査が続いていた。この経緯を踏まえ、2026年4月29日にボンベイ高等裁判所が撤去を認めたことで、法的根拠が確立され、今回の撤去に至った。

撤去は同裁判所の許可に基づき執行されており、約5,200平方メートルの鉄道用地を対象に5月19~23日の5日間で作業を完了する計画となっている。現地ではバリケードが設置され、人や車両の移動が制限されているほか、ブルドーザーによる建物解体が進められている。ムンバイ警察や鉄道警備隊(RPF)、政府鉄道警察(GRP)など約400人規模の要員が動員されるなど、厳重な警備体制が敷かれている。

今回のスラム撤去の背景には、同地域における鉄道輸送力の拡張計画がある。西部鉄道はサンタクルーズ~ムンバイ・セントラル間に5番線・6番線を建設する計画を進めており、用地の確保が急務となっている。計画が実現すれば、将来的にムンバイ発着の列車を新たに約50路線増発できる見込みであり、バンドラ・ターミナスの機能拡張や、郊外線と長距離列車の接続改善が期待される。一方で、社会的影響への配慮も求められており、同裁判所は撤去を認めるものの、2021年の調査で居住資格が認められたスラム居住者の権利は、確実に保護する必要があるとの姿勢を示している。

ムンバイでは人口増加と都市化の進展に伴い、鉄道インフラの拡充が課題となっている。今回の措置は、都市再開発の一環と位置付けられるが、スラム居住者の生活再建との両立が重要な政策課題となり得ることを示唆している。

(野本直希)

(インド)

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