医療機器表示規格を改正、リスクベース要件を導入

(メキシコ)

調査部米州課

2026年05月21日

メキシコ保健省傘下の連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)は2026年5月19日、医療機器の情報表示要件を定める「NOM-137-SSA1-2025(医療機器のラベリング)」を官報で公布した。同規格は従来のNOM-137-SSA1-2008を全面的に置き換えるもので、医療機器の識別、安全性確保、トレーサビリティの強化を目的として規定内容を抜本的に見直した。対象は、メキシコ国内で製造、輸入、流通される全ての医療機器(体外診断用機器やソフトウェアを含む)であり、製造業者、輸入業者、販売業者に適用される。特に、近年のデジタル化や製品の高度化を踏まえ、ラベリングに求められる情報の範囲と深さが大幅に拡張された点が特徴だ(添付資料表参照)。

新規格は公布から360日後に施行される。また、既存製品については施行後180日間の経過措置が設けられており、旧規格に基づく表示製品の在庫消化が一定期間認められる。このため企業には、施行までの期間を活用した計画的な対応が求められる。

今回の改正では、(1)表示内容の策定にリスクマネジメントの概念を導入し、残留リスク(注1)や使用者特性を踏まえた安全情報の提供を義務付けた点、(2)製造日、製品識別情報(モデル、バージョンなど)、問い合わせ先の明記などを通じてトレーサビリティ要件を強化した点、(3)QRコードやRFID(注2)などを活用した電子的ラベリングを容認した点、が主な特徴として挙げられる。さらに、体外診断用機器については性能特性や検体条件などの詳細情報の記載要件が拡充され、プログラム医療機器(SaMD、注3)に関する表示要件も新たに明確化された。

加えて、使用説明書(IFU)の内容も大幅に拡充され、設置、保守、再使用、廃棄に関する情報や、環境条件や利用シナリオに応じた注意事項の記載が求められるなど、製品ライフサイクル全体を通じた安全情報の提供が重視されている。国際的にも、ISO規格や国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)ガイドラインとの整合が図られており、企業にはグローバル規制と整合的な対応が求められる。

360日後の施行に備えた準備を

今回の改正により、企業は単なるラベルの表記変更にとどまらず、リスク評価、技術文書、品質管理体制などを含む包括的な対応が必要となる。施行までの期間中に、自社製品の表示や関連文書への影響を確認し、改定などの対応を進めることが重要となる。さらに、対象製品の洗い出しや社内手順の見直し、関係部門間の調整を早期に進めることが、円滑な規制対応の鍵となるとみられる。

(注1)全てのリスクコントロールを講じた後に、それでもなお医療機器に残存するリスクを指す。

(注2)RFID(Radio Frequency Identification)とは、電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム。バーコードのスキャンと異なり、RFIDは電波で複数のタグを一気にスキャンすることができる。

(注3)プログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD)とは、疾病の診断・治療・予防など医療目的を果たすソフトウェア。スマートフォンアプリやクラウド上の人工知能(AI)プログラムが代表例で、従来の医療機器に組み込まれたソフトとは異なり、単独で医療機器として機能する。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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