医療素材関連の国内投資を優遇する指針を公布
(メキシコ)
調査部米州課
2026年05月25日
メキシコ保健省は5月21日、医薬品や医療機器など保健関連素材の国内生産および研究開発への投資促進に関する指針を官報で公布した。本指針は、2025年6月2日に公布された政令を受け、その実施に必要な具体的運用ルールを定めたものだ。
政府による一括調達も国内投資誘導の手段に
政令および指針の背景には、医薬品供給不足の解消や輸入依存の低減、国内産業の強化といった政策課題がある。2025年6月2日付政令では、連邦政府による医薬品などの共同一括調達を、国内投資誘導の手段として活用する方針が打ち出され、国内生産や研究開発に投資する企業の参加を促進することが明記された。これを受けた本指針では、共同一括調達における入札評価方法として「点数・割合方式」を採用し、価格や技術に加えて国内投資の有無を評価項目として組み込むことを具体化した。特に、(1)国内における製造拠点や物流施設など生産チェーン関連インフラへの投資、(2)原薬(有効成分)の製造から最終製品化までに至るバリューチェーンの主要工程の実施、(3)基礎研究や臨床試験などの研究開発活動、の3分野が重要な評価軸とされ、これらを満たす企業には加点が与えられる。
入札参加企業は、製造許可や適性製造基準(GMP)の証明、研究プロトコル承認などの客観的証明書類を提出し、実体的な投資を証明する必要がある。さらに、将来の投資計画についても、経済省への登録や契約書などにより裏付けられる場合には評価対象とされる仕組みとなっている。
本指針の適用対象は、社会保険庁(IMSS)や公務員社会保険庁(ISSSTE)、国営医薬品調達・供給公社(BIRMEX)など、主要な公的医療機関による統合調達であり、2027年以降に納入される案件から適用される。一方で、国際協定の適用対象となる調達(注)は除外されるなど、国際約束との整合性も確保されている。
日本製の医薬品、医療機器への影響は小さい
今回の制度は、2025年6月の政令が示した政策方針を具体的な調達規則に落とし込むものであり、政府調達を通じて企業の国内投資を誘導する色彩が強い。しかし、米国、欧州、日本、オーストラリアなどはメキシコとの間に政府調達の章を含む自由貿易協定(FTA)などを締結しているため、基準額に満たない小規模な入札を除けば、国内産品などへの加点評価による差別を受けないとみられる。従って、中国や韓国、インドなどメキシコとの間に特別な協定がない国の企業からの投資誘致に効果が限定されるとみられる。
(注)メキシコが締結する自由貿易協定(FTA)の多くに政府調達の章が含まれ、定められた条件(対象機関による対象産品・サービスの基準額以上の入札)に合致した場合、協定締結国産品・企業に内国民待遇を与えなければならない。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)、EUメキシコFTAなどの協定が定める基準額を超える医薬品や医療機器の共同一括調達の場合、協定締約国の産品や企業を差別すると協定違反とみなされる可能性が高い。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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