英国政府、ガス価格が電力価格に与える影響を断ち切るための方針を発表
(英国)
ロンドン発
2026年05月01日
英国政府は4月21日、ガス価格が電力価格に与える影響を断ち切るための方針を発表
した。中東情勢不安などの地政学的緊張で世界のガス価格が上昇することによる電力価格の上昇を緩和する狙いだ。英国政府によると、英国では、2020年代初頭には電力価格の約90%をガス価格が決定していた。この割合は現在では約60%にまで減少しているが、再生可能エネルギー発電の多くの部分(英国の電力供給の約30%)は依然としてガスの卸売価格に左右されているという。背景には、電力卸取引市場の約定価格が最も限界費用の高い電源によって決定されるため、多くの場合ガス火力と連動するという事情がある(限界費用については2022年9月1日付地域・分析レポート参照)。今回発表された具体的な方針は次のとおり。
- 炭素発電事業者の長期固定契約を推進:差額決済契約(CfD、注1)を結んでいない既存の低炭素発電事業者に卸売差額決済契約(WCfD)の選択肢を提供する。WCfDの詳細は適宜明らかにし、2026年後半に意見公募を行う。
- 発電事業者税(EGL、注2)の改定:EGLの税率を、7月1日から45%から55%に引き上げる。
なお、EGLはCfDを結んでいる発電事業者は対象とならない。この点を踏まえ4月21日付の現地紙ガーディアンは、CfD導入前の発電プロジェクトにWCfDへの参加機会が提示される一方、これに応じない場合はEGLを通じて利益に対する税率引き上げが課されることになると報道した。
今回の発表は電力卸取引市場で売電する低炭素発電事業者にとって、収益安定化への期待となる一方、減収の可能性も伴う。英国の事業者団体エナジーUKは4月21日に声明
を発表。「小売電力価格に対するガスの影響をさらに軽減する上で、前向きな役割を果たす可能性がある」と本発表の意義を認めた一方、「前向きな発表が、不十分な情報発信によって台無しにされてしまったことは残念。先週(注3)、英国および欧州のエネルギー関連株は、政府による不明確で詳細を欠いた発表の直接的な結果として、数十億ポンドもの時価総額を失った」と述べた。
(注1)発電事業者の投資リスクを減らすため、対象となる電源の固定価格(ストライクプライス)と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。市場価格がストライクプライスを上回る場合は、発電事業者が差額を支払う。
(注2)基準価格を上回る価格で販売された卸売電力から得られる収益に対する課税。
(注3)本発表の内容は、政府ウェブサイトでの発表前に一部メディアにより報道されていた。
(齊藤圭)
(英国)
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