シェインバウム大統領、メキシコ鉄鋼産業振興協定に合意
(メキシコ)
メキシコ発
2026年05月08日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は4月29日の早朝記者会見の場で、19の公的機関と3つの業界団体を含む「メキシコ鉄鋼産業振興協定」に合意した。シェインバウム大統領は、同協定の目的を「プラン・メキシコ」(2025年1月17日記事参照)の達成、すなわち「国内生産を強化し、メキシコの経済、国内市場におけるサプライチェーンを強化することだ」と述べた。「政府が購入する鉄鋼は、基本的にメキシコ産、あるいはメキシコで生産されたものであるべきだ」と強調し、政府調達における鉄鋼製品を国内生産品に限定するとした。現時点で具体的な調達の要件は公表されていないが、主にインフラや住宅建設における建設鋼材の調達に関わるとみられる。また、同政策とメキシコが締結する政府調達の章を含む自由貿易協定(FTA)との整合性(注1)についても不透明だ。
ラケル・ブエンロストロ汚職防止相は、この協定が、公共調達、産業政策、資金調達の3つの柱(注2)を持つとした。また、民間セクターの役割として「製品の品質保証、供給と適時納品の確保、市場条件に基づく競争力のある価格の提示、そして公共インフラプロジェクトにおける国産鋼材の採用をさらに推進すること」を挙げた。
国内鉄鋼産業の保護が目的
全国鉄鋼業会議所(CANACERO)のセルヒオ・デ・ラ・マサ会長は同会見で、「本協定は、約9万人の直接雇用を支え、80億ドルを超える進行中の投資に確実性を与え、業界の競争力と持続可能性を強化する上で極めて重要だ」と強調した。CANACEROが同日発表したプレスリリースでは、国内の鉄鋼セクターが特に困難な状況にある中、本協定はメキシコ産鋼材の消費を促進し、国産部品比率を高め、輸入代替を図るものだとした。同リリースによると、現在、鉄鋼産業の稼働率は平均64%で、米国の関税措置により対米輸出が53%減少したほか、輸入品が国内需要の42%を占める状況に直面している。さらに、2025年には完成品の生産量が8.1%減少し、2014年の水準まで後退しているとして、国内の鉄鋼産業が現在の国際情勢により苦境に立たされていると主張した。
国内鉄鋼大手テルニウムのマキシモ・ベドヤ社長は4月29日の会見で、ヌエボレオン州モンテレイ市ペスケリアに自動車用鋼材を製造する新規製鋼所を建設しており、総投資額は80億ドルに上るとした。同製鋼所で粗鋼を生産することで、ブラジルからの鋼材輸入を代替できると述べた。このように、メキシコ政府や国内鉄鋼企業は、他国からの鉄鋼の輸入依存を低減しようとしている。
(注1)メキシコはWTOの政府調達協定に参加しておらず、政府調達は国内調達が原則となる。しかし、FTAなどの国際協定で定められている条件(協定が定める対象機関による基準額以上の入札)に合致した場合は、協定締結国産品・企業も入札に参加することができる。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)など、メキシコが締結する多くのFTAでは、連邦政府機関や国営企業の基準額以上の政府調達を締結相手国に開放する約束を盛り込んでいる。
(注2)3つの柱の内容は、次のとおり。
- 公共調達:成果を確実にするための機関間ワーキンググループの調整、公共調達担当者と鉄鋼企業とのビジネスミーティング、公共調達における国産品使用と持続可能性を促進するためのポイントや比率設定といったインセンティブ。
- 産業政策:不公正な貿易慣行への対抗、国内サプライヤーの振興、および輸入代替戦略に関するもの。
- 資金調達:インフラプロジェクトにメキシコ産鋼材を採用するよう促すインセンティブ。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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