カナダ、経済電化に向けた国家戦略を公表、電力インフラ拡張へ
(カナダ)
トロント発
2026年05月20日
カナダ天然資源省は5月14日、経済全体の電化を進める国家戦略「パワリング・カナダ・ストロング」を公表
した。電力を基盤とした経済競争力の強化を目的に、発電施設・送電網など電力インフラの大規模拡張を打ち出したもので、今後の産業立地や投資動向に影響を及ぼす可能性がある。
同戦略は、電気自動車(EV)の普及や、ヒートポンプをはじめとする暖房の電化、重要鉱物の採掘やデータセンター、先端産業の発展による産業界の電力需要の拡大を背景に、電力需要が2050年までに倍増するとの見通しを前提としている。クリーンエネルギーを利用した発電容量の拡大や送電網の州間連携を進め、安定かつ安価な電力供給体制を構築する方針だ。メラニー・ジョリー産業相兼ケベック地域経済開発担当相は、電力へのアクセスが企業の投資判断や産業集積に直結することから、本戦略は「投資を呼び込み、電化を推進し、産業界のクリーンかつ手頃で、信頼できる電力の利用を可能にする」との認識を示した。クリーン電力への投資の加速や、地政学的リスクに伴うエネルギー安全保障への関心の高まりから、カナダ政府は豊富な水力や再生可能エネルギー資源を活用し、低炭素電力の優位性を生かして新たな産業創出を図る考えだ。
電力供給拡大には1兆カナダ・ドル(約116兆円、Cドル、1Cドル=約116円)を超える投資が必要とされ、政府資金の投入が見込まれる。脱炭素と安定供給の両方を重視する方向性から、マーク・カーニー首相は液化天然ガス(LNG)火力発電を含む幅広いエネルギーの活用を前提とするなど、従来の排出規制に一定の柔軟性を持たせる方針としている。電力網拡張には最大13万人規模の雇用が見込まれる中、既に電力分野では人手不足が指摘されており、労働力確保が課題になる可能性がある。
なお、本戦略は政策の方向性を示すものであり、実施に向けては、今後の予算措置や規制整備が必要となる見込み。政府は今後、州政府や電力事業者などとの協議を進め、具体的な施策を詰める方針だ。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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