欧州食品小売市場の報告書発表、2025年売上高は前年比増も収益性に課題、AI活用拡大など提言

(EU、欧州、中東)

ブリュッセル発

2026年05月11日

欧州の小売・卸売業界団体ユーロ・コマースは4月21日、米国マッキンゼー・アンド・カンパニーと共同で2025年欧州食品小売市場に関する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2025年の食品小売市場の売上高は、収益性への圧力が続き、前年比3.4%増にとどまった。2026年初頭の時点で、調査に回答したCEOの64%は、市況環境は2025年と比較して「改善」または「現状維持」との見通しを示した。しかし、調査は中東情勢悪化前に実施したため、想定以上のインフレ率の上昇や消費者心理の悪化もありうるとした。

報告書では、欧州食品小売市場は大幅な成長が見込めない時期に入ったとし、事業者は既存の資産が活用可能な隣接市場で事業を展開しながら、中核事業を強化するよう提言した。例えば、収益の改善に向け(1)労務管理の最適化や販売費および一般管理費(SG&A)の簡素化、(2)配送準備作業の生産性、在庫管理や配送コストなどの改善によるオンライン販売の強化、(3)2025年は売上高の40%を占めたプライベートブランドの強化などを提言した。また、若年層および高所得世帯を中心に、より高価格帯の商品を購入する傾向が回復している。若年層では調理済み食品など利便性重視の消費が拡大し、外食産業と比較すると市場シェアは依然として小さいものの、生鮮食品販売を上回る成長を見せている。事業者はこうした多様な消費者需要を戦略的に細かく分析し、収益につなげるべきとした。

さらに、CEOへの調査(複数回答可)において、「コストと収益性への圧力」に続き、2026年の最優先課題の1つに挙がったのが「人工知能(AI)の導入と自動化」だ。だが、回答者の56%は「AIがもたらす将来的な効果を判断するのは時期尚早」と、AIの活用はいまだ試験運用段階にある。しかし、献立作成や価格比較のほか、若年層を中心にエージェントコマース(注2)など、AIを利用する消費者は増加傾向にある。そこで、AIを活用し、収益や生産性を向上するには、事業者は(1)製品データ、リアルタイムでの価格や在庫状況などの消費者の購入決定に係るデータの基盤整備、(2)価格設定やプロモーション、品ぞろえの最適化、ワークフローの見直しや中核システムへの統合、関連投資利益率の算出をより厳密にすることが必要になるとした。さらに、日常業務の一部をAIに任せることで、従業員がより戦略的な事業分野に注力できるとも指摘。収益面でAI導入の効果を出すには、デジタル関連投資の透明性の確保、厳密な優先順位付け、活用や効果が測定可能であることが必要と指摘した。

(注1)食品小売企業約35社の最高経営責任者(CEO)と欧州14カ国の消費者約1万5,000人を対象とした調査や市場データ分析に基づく年次報告書。調査対象国はEU加盟12カ国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、チェコ、ルーマニア)と英国、ノルウェー。

(注2)AIエージェントがユーザーの代わりに、商品検索から購入までの一連のプロセスを自律的に実行する新たな購買体験の仕組み。

(滝澤祥子)

(EU、欧州、中東)

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