インドネシアのAIガバナンスを議論、CSISインドネシアがセミナーを開催
(インドネシア)
ジャカルタ発
2026年05月11日
戦略国際問題研究所(CSIS)インドネシアは4月22日、ジャカルタで「公益のための人工知能(AI)ガバナンス:イノベーションと倫理の両立」と題したセミナーを開催した。政府高官や国際機関の専門家が登壇し、急速なAI普及に伴うリスク管理とインドネシアの戦略について議論を交わした。
CSISインドネシアのヨセ・リザル所長は、生成AIの利用人口がわずか3年で53%に普及したとし、「インターネットを上回る速さで浸透している」と指摘した。一方で、2024年の大統領選挙期間中に国民の72%がAI生成のフェイク画像を目撃したというCSISの調査結果を引用し、情報の信頼性低下とリスクへの対応が急務であると強調した。
ユネスコ(UNESCO)のガブリエラ・ラモス元事務局長補は、AI開発が米中などの一部企業に集中し、安全性の検証が不十分なまま市場投入される「ガバナンス・ギャップ」への危惧を表明した。また、インドネシアの「国家人工知能戦略2020-2045」(注)にも言及した上で、開発途上国が単なる「データ提供者」にとどまらないための「3I」フレームワークを提唱した。
- Institution(制度):政府内の監督・規制機関の設置
- Incentives(インセンティブ):透明性の確保とデータ主権の確保
- Investment(投資):デジタル・リテラシーや計算資源への公的投資
インドネシア高等教育・科学技術副大臣で認知科学者のステラ・クリスティ氏は、AIが膨大なデータを必要とするのに対し、人間は少量のデータから抽象化して学ぶという「人間固有の強み」を強調した。その上で、「米中の大規模言語モデル(LLM)に追いつくのは困難だが、インドネシアが持つ膨大な『データの宝庫』を、アルゴリズムや計算能力を獲得するための交渉材料(レバレッジ)にすべき」と主張した。また、教育の核心はAIの操作スキル習得ではなく、AIの出力を「評価・判断する能力」の育成にあるとした。
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
(注)インドネシアでは2020年、当時の研究技術省(RISTEK)が主導し「国家人工知能戦略2020-2045」を策定した。同戦略では、(1)ヘルスケア、(2)官僚機構の改革、(3)教育と研究、(4)食料安全保障、(5)モビリティーとスマートシティーを5つの優先分野に定めている。
(大滝泰史、ティアラ・ダルマシャンティ)
(インドネシア)
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