スイス・バイオテクノロジー産業の2026年版報告書が発表

(スイス)

ジュネーブ発

2026年05月08日

スイス・バイオテクノロジー協会は5月5日、英国コンサルティング会社アーンスト・アンド・ヤング(EY)やスイス国立科学財団、貿易・投資振興機関のスイス・グローバル・エンタープライズ(S-GE)など7つのパートナー機関・企業と共同で作成した「スイス・バイオテクノロジー報告書2026年版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。スイス・バーゼルで5月4~5日に開催された「スイス・バイオテック・デー2026外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のプレナリー・セッション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに合わせて、ウェブサイト上で一般公開された。同報告書については、スイス・バイオテック・デーの前夜となる3日のウエルカム・レセプションの時点から、当該イベント参加者向けにリリースしていた。

2025年は資金調達環境における課題が続き、世界のバイオテクノロジー業界全体にとって依然として厳しい年になった。しかし、公開資本市場において、スイスは逆行する傾向を示し、2025年のスイス・バイオテクノロジー産業の売上高は75億スイス・フラン(約1兆5,075億円、CHF、1CHF=約201円)と過去最高を更新した。一方、研究開発(R&D)投資額は25億CHFと、2024年の26億CHFからわずかに減少した。

重要な変化としては、スイスでの未公開企業の資金調達が前年比38%増と伸び、過去最高の11億5,000万CHFを記録、調達総額25億5,500万CHFのうち45%を占めた。中でも、未公開企業の資金調達としては、ウインドワード・バイオ(Windward Bio、1億8,600万CHF)とグリコエラ(GlycoEra、1億400万CHF)が牽引した。資本市場環境が全体的に厳しい状況だったため、2025年にスイスで上場した企業はバイオベルシス(BioVersys、8,000万CHF)のみだったが、バイオテクノロジー分野での過去5年間における欧州最大の新規株式公開(IPO)となった。そのほか、大規模な追加資金調達を確保した上場企業としては、ムーンレーク・イミュノセラピューティクス(Moonlake Immunotherapeutics、4億9,000万CHF)、オキュリス(Oculis、2億7,400万CHF)、イドルシア(Idorsia、2億1,600万CFH)、ADCセラピューティクス(ADC Therapeutics、1億2,900万CHF)などが挙げられる。

報告書では、スイスの強力な国際協働モデルがこの成長を支えており、海外投資家は引き続きスイスのバイオテクノロジー産業に多くの投資を行い、スイスのバイオテクノロジー企業は国際的なライセンス契約や共同研究契約を活用して製品承認や収益源の拡大を図っていると解説。また、スイスの研究開発型バイオテクノロジー企業の雇用者数は増加し、全体で2万1,000人を超え、過去最高を記録した。

今回発表した報告書のテーマは「人材と粘り強さ」で、スイス・バイオテクノロジー協会のマイケル・アルトルファー最高経営責任者(CEO)は、「スイスの未来は、人材に投資し、不屈の精神をたたえ、起業の自由を支援し、国際的な連携を通じて発展するエコシステムにかかっている」と指摘している。スイスの貿易・投資振興機関であるスイス・グローバル・エンタープライズによれば、スイスのグローバルなバイオテクノロジー・ハブとしての強みは、しばしばイノベーション、生産性、品質という観点から語られるが、これら3つの要素の根底には、決定的な要因である「人材」があるという。初期の科学的発見から大規模な製造、そして世界的な商業的リーダーシップに至るまで、スイスはバイオテクノロジーのバリューチェーン全体を支える人材エコシステムを提供していると強調している。

(田中晋)

(スイス)

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