中東情勢悪化で世界経済は減速、IMF見通し

(世界)

調査部国際経済課

2026年04月16日

IMFは4月14日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(添付資料表1、2参照)。2026年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)は3.1%と、前回1月時点の予測(3.3%)から0.2ポイント下方修正された。2026年2月末に発生した中東地域における紛争が世界経済の大きな障害となっていると指摘した。2027年の成長率については、3.2%で前回の予測を据え置いた。

IMFは今回の見通しで、通常シナリオに代え、中東の紛争が短期間で終息すると仮定した「参照予測」を示した。参照予測に加えて、IMFは2つの下方シナリオも提示した。紛争の長期化を想定した「悪化シナリオ」では、2026年の世界経済の成長率は2.5%、2027年は3.0%までそれぞれ低下するとした。さらに影響が大きく長期化する「深刻シナリオ」では、2026年と2027年の成長率が、世界的な景気後退の目安とされる2%未満に近づくとの見方を示した。一方で、紛争がなかった場合の2026年の世界経済の成長率は3.4%と、前回よりわずかに上方修正される見込みだったことも明らかにした。

主要国・地域別にみると、米国の2026年の成長率は2.3%で、前回から0.1ポイント下方修正された。紛争によるわずかなマイナス影響と、連邦政府機関閉鎖の終了に伴う2026年第1四半期の経済活動の回復、想定を上回る生産性上昇を反映した。ユーロ圏は1.1%(0.2ポイントの下方修正)と低成長が継続の見込み。中東紛争に加え、ロシアのウクライナ侵攻以来続くエネルギー価格の高騰が製造業を圧迫するほか、他国通貨に対するユーロの実質的な上昇に伴う輸出への影響が要因とされた。

中国は、米国による実効関税率の引き下げと景気刺激策が中東情勢によるマイナスをほぼ相殺し、4.4%(0.1ポイントの下方修正)となった。インドは6.5%(0.1ポイントの上方修正)と高成長が続く見通し。紛争の直接的な影響を受ける中東・中央アジア地域は1.9%で、2.0ポイントの大幅な下方修正となった。

各国への影響度は、エネルギーおよび輸送インフラの被害の程度、ペルシャ湾とアラビア海をつなぐホルムズ海峡への依存度、代替輸出ルートの確保状況によって異なるとし、成長率の縮小はバーレーン、イラン、イラク、クウェート、カタールなど一次産品の輸出国で顕著なのに比べ、オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦での影響は小さいとした。

また、2026年の世界のインフレ率は4.4%まで加速し、2027年には3.7%にやや鈍化するとした。悪化シナリオでは2026年に5.4%まで上昇した後、2027年に3.9%に低下するとしたが、影響が長期化する深刻シナリオでは2026年に5.8%、2027年には6.1%まで上昇すると予測した。

IMFは今回の報告で、下振れリスクが優勢とし、地政学的な緊張の悪化が現代で最も深刻なエネルギー危機を招くおそれがあると警鐘を鳴らした。下振れリスクとしては中東情勢のほかに、レアアースを巡る貿易摩擦の激化などを挙げた一方、上振れの可能性として人工知能(AI)関連投資にも言及した。

(熊谷佐和子)

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