ウクライナ軍事税、適用期間を延長、戒厳令解除の翌年から3年間

(ウクライナ)

調査部欧州課

2026年04月28日

ウクライナ最高会議(国会)は4月7日、軍事税の適用期間を延長し、戒厳令解除の翌年から3年間とする法案を可決した。ボロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、これに署名し、15日に発効した。

法改正前の軍事税の適用期間は、戒厳令が解除された年の翌年の1月1日までと規定されていた。戒厳令はロシアのウクライナ侵攻が始まった2022年2月24日に発令され、延長を繰り返している。ウクライナ財務省によれば、この法案の採択により、ウクライナの国家予算は、戒厳令解除の翌年から3年間で1,400億フリブニャ(約5,040億円、1フリブニャ=約3.6円)以上を調達できる。

軍事税は、個人や簡易税制が適用される個人事業主などに課税される。個人は現役軍人などの特定のカテゴリーを除き、居住者の国内外の課税所得、非居住者の国内の課税所得などに対して5%が課される。簡易税制の適用を受ける個人事業主などのうち、小規模または農業事業者には各年1月1日時点の最低賃金の10%、中規模事業者や法人(電子居住者を除く)には売り上げの1%が課される。

軍事税適用期間の延長は、2月に承認された4年間で81億ドル規模のIMFの拡大信用供与措置(EFF)実施に当たり求められていた税制改革の1つだった。このほか、(1)デジタルプラットフォームを通して得られた所得への課税、(2)少額小包の輸入に対する免税措置の廃止、(3)簡易税制の適用を受ける個人事業主に対するVAT免除措置の撤廃について、3月末までの税制改革が求められていた。これらの改革は、脱税や違法貿易などウクライナの経済成長を阻害する要因を除去し、公平・公正な競争環境を確保し、戦後における優先分野への支出のための財源確保などを目的としている。改革の遅れは資金受領の遅れにつながる。

(1)、(2)は議会や議会委員会での審議が行われているが、(3)は議員や産業界からの反発が強く、所得の閾値(しきいち)を含めた条件の緩和が求められている。ウクライナのユリア・スビリデンコ首相は自身のSNSで19日、米国のワシントンで開催されたIMF・世界銀行春季会合(4月13~18日)でのIMFや欧州パートナーと会談において、個人事業主へのVAT導入はデリケートな問題であり、建設的なアイデアではないとの共通認識を得たとし、必要な解決策と代替案を検討していくとコメントした。また、欧州ビジネス協会(EBA、注)は21日、ウクライナ政府に対し、個人事業主へのVAT導入は、シャドービジネスに対抗する唯一の選択肢ではないとし、政府とともに代替する解決策を策定する用意があると、ウェブサイトで表明した。

(注)ウクライナで事業展開する約900社が加盟する企業連合。欧州委員会が活動を支援しており、EUとウクライナの関係構築にも貢献。国内外の投資家の権利保護や政府・企業間の関係構築、ビジネス環境に関する情報提供などの活動を行う。

(柴田紗英)

(ウクライナ)

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