スペイン中銀、イラン情勢緊迫化の中、2026年成長率見通しを上方修正
(スペイン、中東)
マドリード発
2026年04月14日
スペイン中央銀行は3月27日に公表したマクロ経済予測
で、2026年のスペインのGDP成長率を2.3%とした(添付資料表参照)。これはユーロ圏平均(0.9%)を大きく上回るほか、2025年末の予測からも0.1ポイントの上方修正となる。一方で、強気な見通しの背景にあっても、イラン情勢の緊迫化に伴う「地政学的リスク」が引き続き景気の重しになっていると指摘する。中銀の試算によると、中東紛争に伴うエネルギー価格高騰や物流網の混乱はGDP成長率を0.4ポイント押し下げる要因となるが、2025年末からの好調な経済の勢いと政府の危機対応パッケージがその影響を相殺する見通しだ。
これに先立つ3月26日、下院は政府が打ち出した総額50億ユーロ規模の緊急経済対策を承認した。主な内容は、燃料、電力、ガスなどにかかる付加価値税(VAT)率の21%から10%への引き下げに加え、電力特別税や炭化水素特別税などの物品税率引き下げといった大規模な減税措置だ。さらに、食料安全保障確保のため、農業や輸送などの特定セクター向けに肥料補助金や燃料補助金の支給も盛り込まれた。他方、電気自動車・充電設備に対する購入額の15%の個人所得税からの控除、太陽光発電・ヒートポンプ設備の省エネ改修を対象にした優遇措置も導入した。
なお、燃料に対するVATの引き下げをめぐっては、化石燃料への軽減税率適用は認められていないとして、欧州委員会がスペイン政府に対し「EU指令違反」と警告したと報じられている(4月7日付「エル・パイス」紙)。それでも、家計・企業支援のためとして同措置を6月末まで維持する方針だ。政府は今回の燃料に対するVATの減税により、燃料1リットル当たり最大0.3ユーロの値下げ効果を見込んでいるが、4月6日時点のレギュラーガソリンと軽油の平均税込み価格は、それぞれ1.55ユーロ、1.81ユーロとなった。施行前と比べると、ガソリンは0.18ユーロ下落した一方、軽油は同0.07ユーロの下落にとどまっている。需給バランスや国際市場価格の動向も影響しているとみられ、特に軽油では減税の効果は限定的だ。
中銀予測では、2026年のインフレ率見通しを前回予測から0.9ポイント引き上げ3.0%とし、中東紛争に伴う物価上昇圧力の再燃に警戒感を示した。紛争が5月以降も長期化・深刻化した場合には、原油や電力価格の高騰が続き、インフレ率がさらに上振れする可能性があるとしている。その場合、GDP成長率はベースラインの2.3%から最悪で1.9%まで低下する可能性があるとみている。
(伊藤裕規子)
(スペイン、中東)
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