フィンテックで社会包摂を目指す、ラオスのFINA創業者に聞く

(ラオス)

ビエンチャン発

2026年04月23日

FINA FINTECH(以下FINA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、注1)は、ラオスで金融業の改革を目指すイノベーション企業だ。従来の銀行業が抱える制約をテクノロジーによって克服し、社会包摂(注2)を事業の中核に据える。FINAは、マイクロファイナンス(注3)をデジタル金融サービスとして再定義し、誰もが利用可能な金融インフラの構築を進めている。ジェトロは同社に話を聞いた(取材日:49日)。

創業者兼CEO(最高経営責任者)のスパポーン・スワンナボン氏は、20年間にわたり銀行実務の最前線で経験を積み、過去10年間はラオスにおけるスタートアップ投資や起業エコシステムの構築に深く関与してきた。金融業界の強みと限界を熟知した同氏の問題意識がFINA設立の原点となっている。

写真 スパポーン・スワンナボン創業者兼CEO(FINA提供)

スパポーン・スワンナボン創業者兼CEO(FINA提供)

FINAは「ラオス初のデジタルバンク」を目標に掲げ、2024年の設立後、大手商業銀行と同水準のコア・バンキング・システム(注4)を導入した。これにより、モバイルアプリを通じて24時間365日、安全かつ迅速に金融取引が可能となった。手数料無料のデジタルウォレットから、年利最高12%の定期預金など、高い利便性と利回りを両立したサービスを、実店舗を持たずに提供している。

特に注力するのが、金融アクセスの拡大だ。担保依存型の与信から脱却し、アルゴリズムや機械学習を用いたデジタル信用スコアリングを導入した。これにより、月収の最大5倍、または5,000万キープ(約36万5,000円、1キープ=約0.0073円)の無担保融資を可能とし、中小企業や若年層への資金供給を広げている。

FINAのもう1つの強みは、テクノロジーと現場をつなげる取り組みだ。同社は支店を持たない一方、国内13県に5,000人のエージェントを配置し、地理的にアクセスの悪い地域にもサービスを届けることで、農村部の住民も金融サービスを利用できる環境を整えている。また、ラオス女性障害者協会と提携し、障害のある女性40人を金融エージェントとして採用した。金融サービスの利用者にとどまらず、提供者側にも多様な人材を参画させている。

FINAの取り組みは、ラオスの金融機関を「実店舗・担保重視型」から「デジタル・データ重視型」へと転換させ、インフォーマルな経済活動をデジタルの力によって可視化し、正規の金融システムへと統合することを目指している。2030年までに運用ファンド規模を5億ドルへ拡大する計画も掲げ、ラオス経済を支える新たな金融インフラとなる可能性を秘めている。

(注1)FINA FINTECHは2024年設立。当初500万ドルのベンチャーキャピタル投資を受け、事業を開始した。従業員数は50人。東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)主催の「One ASEAN Startup Award 2024」を受賞。

(注2)社会包摂とは、個人や集団が社会の一員として尊厳をもって参加できるよう、能力・機会・立場を改善するプロセスのこと。

(注3)マイクロファイナンスとは、低所得者層に対して小口金融サービスを提供する仕組みのこと。ラオスでは、預金型(DTMFI)、預金・信用組合(SCU)、非預金型(NDTMFI)の3類型がある。FINAはデジタル金融ライセンスのほかにも、DTMFIのライセンスも保有し、貯金、小口融資、決済、他企業への共同投資など、銀行に近い多角的な金融機能を担うことが可能だ。

(注4)コア・バンキング・システムとは、預金や融資、決済といった金融取引を一元的・リアルタイムに管理する金融機関の基幹ITシステムのこと。

(山田健一郎)

(ラオス)

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