スペイン、非正規移民50万人の正規化に着手、EU内からは批判や警戒感

(スペイン)

マドリード発

2026年04月30日

スペイン政府は4月16日、外国人の特別正規化の申請受け付けを開始した。対象となるのは、2026年1月1日以前にスペインで国際保護を申請した人、または同日以前からスペインに滞在している非正規の滞在者。申請時点で少なくとも5カ月の継続滞在を証明できること、犯罪歴がないことなどが求められる。居住実態が認められれば、1年間の在留・就労許可が与えられる(EU他国での就労・居住権は付与されない)。申請期間は6月30日までの約2カ月半。潜在的対象者は約50万人とみられ、4月24日時点でその4分の1に相当する13万人が申請した、と報じられている。

スペインでは、移民の正規化は今回が初めてではない。1986~2005年の間には、政権を問わず6回の特別正規化が実施され、累計120万人超の外国人が正規化された。また、生活基盤を築いた非正規滞在者に、就労実態や家族関係などを考慮して在留・就労資格を付与する制度も恒常的に存在する。現在、中南米(コロンビア、ペルーなど)や北アフリカ(モロッコなど)を中心に約38万人が、この制度を通じて在留資格を得ている。今回の措置は、既存制度で吸収しきれなかった層、とりわけ難民申請などの国際保護申請が不認定となった人々を取り込むための時限的な正規化ルートと位置付けられる。

政府が前面に押し出しているは、労働市場・経済効果としての移民政策だ。スペインでは未充足求人は約15万6,000件に上り、介護、農業、宿泊・飲食業などでは人手不足が慢性化している。政府は、正規化の潜在的対象者のうち10万人近くがすでにスペインの経済・社会に組み込まれ、こうした分野を支えていると説明する。正規化は雇用を奪うものではなく、非公式経済にある労働力を公式経済に取り込み、税や社会保険料の担い手に変える効果があるというのが政府の主張だ。

ただし、EU内では反発もある。欧州議会では2月にスペインの移民正規化のシェンゲン圏への影響が議論された。フランスの国民連合(RN)のジョルダン・バルデラ党首は、スペイン政府が特別正規化の申請受け付けについて発表した4月14日、正規化された移民が「明日にはフランス国内を自由に移動するだろう」とSNSで批判。欧州委員会のマグヌス・ブルンナー内務・移民担当委員も4月15日に、「例えばスペインの首都や港湾、国境検問所で起きることは、結局、シェンゲン圏全体に影響を及ぼすことになる」と述べ、スペインの措置に警戒感を示す。

今回の正規化は、スペイン国内の労働政策であると同時に、EUの移民管理をめぐる論点にもなっている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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