中国、2028年までに長期介護保険制度を全国で導入
(中国)
大連発
2026年04月01日
中国共産党中央委員会弁公庁および国務院弁公庁は3月25日、「長期介護保険制度の確立を加速することに関する意見
」(以下、同意見)を発表した。中国では2016年から長期介護保険制度の試行導入が開始され、これまで49の都市で実施されてきたが、同意見では、2028年末を目標に同制度を全国で本格導入する方針が示された。あわせて、既存の試行都市については、2028年末をめどに同意見で定める基準へ段階的に統一することが求められている。
同意見では、長期介護保険制度を、要介護者に対する基本的な生活支援および関連する医療ケアについて、サービス提供と費用保障を行う公的な社会保険制度と位置づけ、全国民を被保険者とすることを明記した。介護保険の給付対象は年齢を問わず、重度の介護を必要とする国民とされ、在宅サービス、デイサービス、施設サービスの利用時に適用される。今後は、経済発展の状況や制度の整備状況を踏まえつつ、給付対象範囲の拡大を検討するとしている。また、介護サービス分野におけるスマート技術の導入や、福祉用具についても、介護保険の給付対象とする可能性を検討・研究するとしている。
同意見では、制度の基本的な枠組み(保険料率、サービス内容、要介護認定基準など)は全国共通としつつ、給付水準については、国が示す基本方針(被保険者の条件によって給付率を50%程度または70%程度とする)に基づき、各地域(省・市・自治区)が地域事情に応じて適度に調整することを認めている。また、在宅・デイサービスの利用促進を目的に、これらの分野については給付率を相対的に高めることも可能とした。
年間の給付限度額については、各地域における前年度の住民1人当たり可処分所得の50%を超えてはならないと規定している。中国では地域間の可処分所得の格差が大きく、例えば2025年の住民1人当たり可処分所得は、上海市が9万1,987元(約211万5,700円、1元=約23円)に対し、黒龍江省は3万2,851元となっており、給付限度額に大きな差が生じることになる。
被保険者は全国民とされるものの、制度の主な受益者は高齢者となる。中国の65歳以上の高齢者人口は2億2,365万人(2025年末時点)に達しており、2021年に高齢社会(高齢化率14%以上)に突入した。中国では、経済発展の途上で急速な高齢化が進行していることから、高齢者数の増加が介護・福祉サービスの市場規模拡大に直結していない側面も指摘されてきた。しかし、長期介護保険制度の全国展開により、介護・福祉サービス事業者からは、中長期的に安定した収益基盤の形成につながるとの期待の声が聞かれている。
具体的な運用策については各地域に委ねられていることから、今後は関心のある地域ごとの実施細則や運用動向を注視する必要がある。
(呉冬梅)
(中国)
ビジネス短信 36c646c70961d620





閉じる