フィリピン、「国家エネルギー非常事態」を宣言
(フィリピン、中東)
マニラ発
2026年03月31日
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は3月24日、大統領令第110号
に署名し、「国家エネルギー非常事態」を宣言した。有効期間は原則として1年間。米国・イスラエルとイランの軍事衝突の激化に伴う中東情勢の悪化により、世界有数の石油輸送路であるホルムズ海峡が機能不全となり、フィリピン国内における原油価格の高騰と供給不安が生じている。
フィリピンは原油輸入の9割超を中東地域(注1)に依存する純輸入国であり、政府備蓄も約45日分にとどまる。エネルギー危機に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)で、国内のエネルギー需要を支えるために必要な石油製品の確保や適時供給に大きな影響が及ぶ可能性がある。
今回の宣言により、エネルギー省には、燃料最適化計画、需給調整、省エネルギー対策の厳格な実施を含むエネルギー供給管理策を講じる権限が付与された。
さらに、政府は宣言の中で、生活・産業・食料・交通を横断的に支える包括的な枠組み「UPLIFT(注2)」の策定を盛り込み、マルコス大統領を委員長とする省庁横断のUPLIFT委員会を設置することとした。本委員会は燃料、食料、医薬品およびその他の必需品の供給・流通を監視するとともに、公共交通、公共サービス、公益事業、医療などを継続的に運営する任務を負う。また、経済の安定維持、石油製品の調達に向けた許認可手続きの迅速化、石油製品への依存低減に向けた中長期的な戦略の策定も行う。
マルコス大統領は今回の宣言について、単なる物価高対策ではなく、物理的なエネルギー供給途絶への備えであると強調した。中東情勢が長期化すれば、燃料不足や航空便減便、物価高、産業活動への影響が懸念される。
フィリピンでは、国内の軽油、ガソリン価格が高騰し、道路の交通量も減少している。フィリピン政府は対応策として、ディーゼル燃料などの備蓄のための200億ペソ(約520億円、1ペソ=約2.6円)の予算を投入するほか、首都圏の鉄道運賃の半額化や、生計への影響が大きい公共交通機関の運転手への補助金支給などを実施している。
(注1)ASEAN Stats(2024年)によれば、原油(HSコード2709)におけるフィリピンの輸入相手国・地域のうち、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラクが上位3カ国を占め、これら3カ国で全体の94.9%を構成する。
(注2)UPLIFTは、Unified Package for Livelihoods, Industry, Food, and Transportの略。
(葛原伯史)
(フィリピン、中東)
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