ビジネスと人権イベント開催、中堅・中小企業が取り組み語る
(日本)
調査部米州課
2026年03月30日
ジェトロは3月25日、東京本部で「中堅・中小企業が語る!一から始める人権尊重経営」と題しイベントを開催した。中堅・中小企業特有の課題や課題への取り組み方法をテーマにしたパネルディスカッションと交流会が行われ、これから取り組みを進めたい中堅・中小企業、中小企業と共に取り組みを進めたい大企業など35人が参加した。
パネルディスカッションでは西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の湯川雄介弁護士をモデレーターに、人権デューディリジェンス(注1)の導入に向けて専門家の伴走型で人権方針の策定などを進めるジェトロのワークショップに参加した海外貨物検査(本社:東京都中央区、検査業)、ヒロハマ(本社:東京都墨田区、缶パーツ製造業)、岐阜プラスチック工業(本社:岐阜県岐阜市、プラスチック製品製造業)、ヤマグチマイカ(本社:愛知県豊川市、窯業・土石製品製造業)が、自社の人権尊重に向けた取り組みなどを解説した(注2)。
湯川弁護士は各社の取り組みは企業の業種や状況、既存の取り組みなどによって一様ではないことを念頭に、まず「ワークショップを通じて得られた最大の気づき」について質問した。海外貨物検査からは、会社にとって対処しやすい問題から取り組むのではなく、サプライチェーン上で高リスクとなり得る部分を見極めて優先対応する必要性、岐阜プラスチック工業からは国内の法令順守はもとより、より高いレベルで労働者視点の働き方の見直しが重要であること、ヒロハマからは国際的に求められる人権への負の影響の範囲の理解、ヤマグチマイカからは現地労働者との直接対話が重要であることといった旨のコメントがあった。
「人権方針を検討・策定していく中での工夫や難しかった点」については、海外貨物検査およびヒロハマから、国連「ビジネスと人権に関する国連指導原則」を押さえつつも、人権方針の定着を見据えて、社員にとって理解しやすい言葉を選びながら自社視点で策定していくことの重要性に触れられた。
「ステークホルダーエンゲージメント(注3)に関する気づきや課題」として、岐阜プラスチック工業からは、外国人材の雇用に伴い、本人の声を聞き、より細やかに気が付ける関係性の構築と対応の実効性が重要であること、ヤマグチマイカからは、現地労働者との対話の方法の1つとしてNGOなどとの連携も一案であることといったように、両社とも労働者と直接対話することの重要性を挙げた。
最後に登壇者と参加者間で交流が行われた。参加者からは、「国際的な企業活動を行うにあたっては、ビジネスと人権を意識せずには通用しない時代になってきたと感じた」「各社の具体的な取り組みが聞けて大変参考になった」「『ビジネスと人権』は初耳だったが、各社の取り組みの背景が参考になった」といった声が聞かれた。
(注1)企業が引き起こし、助長し、直接関連する人権への「負の影響」について特定・評価し、潜在的な影響についてはこれを予防し、実際の影響については適切な手段を通じて軽減・是正し、その進捗と結果をフォローアップするとともに、外部に開示する継続的なプロセスを意味する。
(注2)日本政府は2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン
」を策定。ジェトロは中堅・中小企業が同ガイドラインを自社の経営や事業運営に実施・活用し、人権尊重に係る取り組みを実施する足掛かりとし、自律的に継続することを目的に、2025年7月から2026年1月まで専門家による伴走型で人権方針の策定などを進めるワークショップを実施した(各社の取り組みについては2026年3月27日付地域・分析レポート特集「人権尊重を経営の中核へ-中堅・中小企業の実践事例」も参照のこと)。本イベントは同ワークショップの参加企業から、人権尊重への具体的な取り組みやその課題、また実施する上での企業としての考え方、対応の仕方などを取りまとめ、広く普及することで、多くの中堅・中小企業の参考となることを目的として実施した。
(注3)企業と、影響を受ける可能性のあるステークホルダーとの間での継続的対話。
(谷本皓哉、古木勇生)
(日本)
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