スウェーデンで進むグリーン水素の政府支援と産業利用
(スウェーデン、欧州、日本)
調査部欧州課
2026年03月16日
スウェーデンでは政府支援を活用した民間主導のグリーン水素プロジェクトと産業分野での水素利用が着実に進展している。林産・パルプ大手ソードラと再生可能エネルギー開発企業OX2、ベルギーに本社を置くエネルギー技術企業TESの3社は3月9日、政府助成制度「産業リープ(Industriklivet)」(注1)の支援を受け、南西部ベローでグリーン水素とバイオ由来のCO2(二酸化炭素)を原料とする合成メタン(e‑NG)生産の実現可能性調査(FS)を開始すると発表した。FSは技術・法規制・商業面の条件を検証しつつ2027年夏まで実施される。
計画では、ソードラがパルプ工場で発生するバイオマス由来のCO2、OX2が水素製造に必要な再生可能電力、TESは合成メタンの製造技術と市場供給インフラに関するノウハウの提供を担う。合成メタンは天然ガスの代替が可能とされている。将来の施設稼働時には年間最大約1.2テラワット時(TWh)の合成メタンを生産し、西スウェーデンのガス供給量の約15%を代替できると見込まれている。
スウェーデン国内で活動する日本企業の関連動向としては、日本製鉄グループの山陽特殊製鋼の完全子会社オバコがグリーン水素を活用した特殊鋼生産に取り組んでいる。同社は産業リープの支援を受け、2023年9月からホフォシュ製鉄所で特殊鋼向けのグリーン水素製造プラントを稼働させている。
スウェーデンは、2045年までのカーボンニュートラル達成を法的に定め、欧州でも先進的な気候政策を展開している。電力は水力・原子力・風力など非化石源が中心で、再エネ拡大や原子力の位置付け見直しを通じて脱炭素化を進めている。政府による大規模な直接補助は限定的だが、産業リープや「気候リープ(Klimatklivet)」(注2)など、民間主導の取り組みを後押しする制度が整備されている(調査レポート「スウェーデンのクリーンエネルギー・水素産業動向(2026年2月)」参照)。
同国ではグリーン水素が欧州でも比較的低コストで生産可能とされており、政府の支援制度も追い風となって、水素の産業利用が着実に進展している。
(注1)産業リープは、2018年に開始したエネルギー庁管轄の助成金制度。財源は政府予算およびEUの復興レジリエンス・ファシリティー(Recovery and Resilience Facility、RRF)で、支援対象は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、バイオCCS、二酸化炭素回収・利用(CCU)、電化、水素、バイオマス、リサイクルの技術分野に及ぶ。
(注2)気候リープは2015年に開始された環境保護庁管轄の助成金制度。財源は産業リープと同様に、政府予算およびRRFである。EU排出量取引制度(EU ETS)の対象外となる事業者による再生可能エネルギーへの転換や化石燃料に依存しない設備投資を支援する。
(小野塚信)
(スウェーデン、欧州、日本)
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