米シンクタンク、USMCA見直しに関するセミナー開催、産業界は協定継続の重要性を主張
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年03月06日
米国シンクタンクのブルッキングス研究所は3月4日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)(注)の見直しに関するセミナーを開催
した。
ブルッキングス研究所は例年、北米3カ国の通商関係とUSMCAの活用を通じた経済関係の強化を分析・評価する報告書「USMCA Forward」を発表している。2026年報告書
の発表に合わせて開催された今回のセミナーは、2026年7月にUSMCAの延長に向けた北米3カ国の共同見直しが予定されていることを踏まえて、「共同見直しと北米通商関係の未来」をテーマとし、2部構成でパネルディスカッションが行われた。
第1部では、大学やシンクタンクの通商・経済政策分野の研究者が登壇した。ブルッキングス研究所で通商・経済外交部門の上席研究員を務めるカリー・ヒアマン氏は、特に農業部門にとってUSMCAの継続が重要だと主張した。同部門の関連企業は北米市場を単一市場とみなした上で戦略構築や投資を行っていると解説し、その前提を維持するためにUSMCAの継続性が重要であることを訴えた。ただし、USMCAによる特恵関税の適用を受けるためには、原産地証明の書類整備などに追加的なコストが発生することから、対応負担は大企業に比べて中小企業にとって重くなりやすく不均衡が発生していると指摘し、適用要件を実行可能かつ分かりやすいものへと見直すべきだと主張した。なお、同氏は、グローバル市場が北米3カ国を統合した市場よりも大きいことにあらためて触れ、USMCAを北米の農業部門がグローバルな競争力を高める基盤として活用できるように見直すことが重要だと述べた。
ルーズベルト研究所で産業政策・通商部門ディレクターを務めるトッド・タッカー氏は、自動車産業を巡る環境がUSMCA締結時点と現在で異なるとして、中国が電気自動車(EV)と内燃機関(ICE)自動車の両方で、世界全体の需要量を供給できるレベルまで能力を拡大したことを例示した。そして、USMCA見直し時に、北米3カ国の自動車産業の競争力を引き上げる方法を検討する必要性を説いた。
第2部では、3カ国の経済団体の通商担当幹部が登壇した。USMCA見直しでは、早期に見直しに合意することが各国のビジネス界にとっての優先事項だと一致した一方で、それぞれ改善が必要な点も指摘した。米国の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」で通商・国際担当バイスプレジデントを務めるナシム・ファッセル氏は、USMCA締結時点から今日までの間に急速に発展・変化したイノベーション部門と経済安全保障分野を、今回の見直しで注目される領域と示した。カナダ商工会議所で国際担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるマシュー・ホームズ氏は、USMCAのデジタル章に人工知能(AI)や量子暗号といった、現代の通商環境に大きな影響を与える分野が含まれていないと指摘した。メキシコ企業家調整評議会でバイスプレジデントを務めるフアン・コルティナ・ガラルド氏は、非市場的な経済慣行を持つ市場への依存を減らす必要性を主張した。具体的には、積み替え輸送を減少させるような原産地規則の検討が必要だと述べた。そのためには、3カ国間での戦略的連携が不可欠だと主張した。
なお、米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表とメキシコのマルセロ・エブラル外務相は3月5日、USMCA見直しに向け、3月16日の週に最初の会合を開催すると発表
した。両国はその後も見直しの一環として定期的な会合を開催する。一方でカナダとの会合予定は発表しておらず、3カ国間での会合の機会があるかなど、今後の進展が注目される。
(注)USMCAは発効16年目(2036年7月)に失効すると定められている。ただし、発効6年目(2026年7月)に見直しを行い、3カ国が合意した場合、16年後(2042年7月)まで延長される。合意しなかった場合、それ以降毎年、見直しを実施することが規定されている。
(滝本慎一郎)
(米国、メキシコ、カナダ)
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