中東情勢の悪化によるビジネスへの影響、在ポーランド日系企業と専門家に聞く

(ポーランド、イスラエル、イラン、米国、日本)

ワルシャワ発

2026年03月13日

ポーランドで活動する複数の日系物流関係者(取材日:3月5日および9日)によると、中東情勢の悪化により、航空輸送・海上輸送の双方で混乱が広がっている。物流ネットワークの混乱により輸送能力の逼迫、スケジュール遅延が同時進行で発生しており、特に航空便では各国による規制強化が顕著だ。ドバイ、ドーハ、アブダビなど主要ハブ空港を経由する便は停止・制限が相次ぎ、中国、東南アジア、日本から中東経由で欧州へ向かう貨物も滞っている(3月4日時点)。影響は中東発着便にとどまらず、中東を経由しない代替ルートにも波及し、振り替え需要の集中により運賃は大幅に上昇、燃料費や保険料も高騰が予想される。

一方、アジアから欧州への海上輸送はアフリカの喜望峰経由が主流となっているため、直接の影響は限定的とされる。ただし、中東航路の停止により世界全体のコンテナ需給が乱れ、燃料費高騰など間接的影響は避けられない。ポーランドの日系企業の多くは海上輸送を中心としているが、緊急調達品など航空便を利用する貨物ではスペース確保が難しくなりつつある。

ポーランドに製造拠点を持つ日系企業の担当者(取材日:3月6日)に、中東情勢の悪化による影響について聞いたところ、「主な取引先から欧州域内のサプライヤーを調達先として指定されているため、現時点では直接的な影響は出ていない」とのコメントが得られた。今後の見通しについては、次の2点が挙げられた。1つ目は、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱が長期化した場合、製造コストが上昇し、価格転嫁を検討せざるを得なくなる可能性だ。ただし、ウクライナ侵攻直後の高インフレ期と比較すれば影響は限定的で、取引先との価格交渉の材料としては弱いという。2つ目は、競合である中国からの完成品や部品について、輸送費や販売価格が上昇することで、市場シェアに変動が生じる可能性があるとした。

ワルシャワ経済大学の橋本知幸准教授(取材日:3月9日)によれば、中東情勢悪化によるエネルギー価格や為替の変動は避けられないものの、大企業にとっては過去の中東危機と同様で想定内との見方が強い。世界のGDPのうち中東湾岸諸国の規模は2~3%程度と小さく、過度に大きく語られているとの指摘もある。一方、米国はイランやベネズエラへの関与を通じて資源と物流網の影響力を拡大し、中国への圧力を高める可能性があるが、現時点では長期的な戦略は見えず、紛争の泥沼化も排除できない。イラン政権崩壊後の展望も不透明で、中東地域で生産される石油・ガスだけでなく、半導体製造に不可欠なヘリウムや、肥料生産に使われる尿素、窒素などの供給停滞が日本を含む各国へ間接的な影響を及ぼす懸念が続く。

(金杉知紀)

(ポーランド、イスラエル、イラン、米国、日本)

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