マクロン大統領、フランス核抑止政策の大幅強化を発表
(フランス、ドイツ、英国、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、米国、ロシア、中国)
パリ発
2026年03月06日
エマニュエル・マクロン大統領は3月2日、フランス西部フィニステール県ロング島の戦略潜水艦基地で行った演説で、フランスの核抑止政策を大幅に強化する方針を発表した。
まずマクロン大統領は、フランスの核戦略は厳格に防御的であり、核戦争には関与せず、通常戦力と核戦力を完全かつ明確に切り離すという従来の原則を維持すると表明した。核兵器の戦術的使用という概念は、フランソワ・ミッテラン大統領以降と同様に明確に否定した。その上で、フランスの「重要利益」への抑止力が将来も確実に機能し続けるよう、核弾頭数の増加を命じ、今後は憶測を避けるため保有数を公表しないとした(注)。
続いて、フランスの「重要利益」が自国領域にとどまらず、欧州のパートナー国の安全も含むという立場をあらためて強調した。また、従来の枠を超えた「前進抑止(dissuasion avancée)」という新方針の導入を明らかにした。これは、核使用の最終決定権をフランスが単独で保持するという前提を維持しつつ、核抑止力を欧州に拡張する枠組みであり、欧州の同盟国との協力を段階的に強化していくものだ。具体的には、戦略航空部隊の欧州での分散配置、共同演習、シグナリング(抑止メッセージ)の発信などが含まれる。状況によっては、フランスの戦力の一部が同盟国領内に展開される可能性も示唆した。
この取り組みには既にドイツや英国に加え、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークが参加の意向を示している。マクロン大統領は、こうした動きが「欧州の防衛戦略に実質的な厚みをもたらすものだ」と説明した。さらに、今回の「前進抑止」がNATOの核任務とは別個の取り組みでありつつ、戦略的に補完関係にあることを強調した。
演説の後半では、欧州はこれまで第三者が決めた規則に安全保障を委ねてきたが、今こそ欧州主導の新たな安全保障体系を構築すべきだと主張した。さらに、長期的目標として核兵器のない世界を掲げ、原子力の平和利用の推進と国際原子力機関(IAEA)への支援を継続する方針を示した。
政治不安が指摘されるフランスだが、極右「国民連合(RN)」や極左「不服従のフランス(LFI)」を含む野党各党は、マクロン大統領が示した核抑止に関する主権維持の原則を受け入れる姿勢を示している。
(注)ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の「SIPRI年鑑2025」によると、フランスの核弾頭数は290で、米国、ロシア、中国に次いで世界4位。
(山崎あき)
(フランス、ドイツ、英国、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、米国、ロシア、中国)
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