米IBMが「量子コンピュータと創薬」イベントで日本の大学や研究機関との連携事例紹介
(米国、日本)
ニューヨーク発
2026年03月04日
米国のIBMは2月6日、在ボストン日本総領事館およびジェトロの協力の下、ボストンのIBM研究所において「量子コンピュータと創薬」をテーマとしたイベントを開催した。ボストンに拠点を置く製薬関連の日系企業、アクセラレーターなど創薬エコシステム関係者、さらには日本政府関係機関など、約40人が参加した(注1)。
イベントでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や日本医療研究開発機構(AMED)といった日本政府関係機関から、日本における量子技術に関する政策の方向性や人工知能(AI)を活用したプロジェクトの紹介が行われたほか、IBMからは同社が開発する超電導方式量子コンピュータの概要および創薬分野における活用事例が説明された。
冒頭、NEDOは日本の量子コンピュータ関連政策や国家プロジェクトの概要を紹介、続いて、AMEDは産学連携による次世代創薬AI開発プラットフォーム事業「DAIIA」に関する説明を行った。
IBMはこれまで超電導方式の量子コンピュータの開発を推進しており、ボストン近郊ケンブリッジのIBM Researchが研究拠点となっている。ハードウエア開発に関しては、ニューヨーク州ポキプシーで行われている。完全な商用化までには数年を要する見通しで、2030年代の開発完了に向けて順調に進んでいるという。
IBMは、量子コンピュータが古典コンピュータを置き換えるのではなく、それぞれの得意分野で相互補完的に利用する点が重要であると強調した上で、量子計算の優位性が明確な領域に対象を絞り、事業化を進める戦略を示した。
セッションの様子(ジェトロ撮影)
実用例として、理化学研究所(RIKEN)の技術を応用したオハイオ州クリーブランド・クリニック(注2)による薬剤の最適化を目的とした量子コンピューティング手法の実証プロジェクトが紹介された。また、IBMが開発・公開するPython(注3)ベースのオープンソース量子コンピュータ開発キット「Qiskit
(キスキット)」についても説明が行われ、量子コンピュータが誰でも利用可能なプラットフォームとして身近になりつつある現状が共有された。コンピュータを含む最先端計算技術における日米協力は、経済安全保障の観点からも重要性が高まっており、今後も両国間での技術連携や共同開発のさらなる拡大が期待される。
(注1)IBMと日本の協業は2017年の慶應義塾大学との連携を端緒として、現在ではRIKEN、東京大学へとネットワークが拡大している。特に、RIKENのスーパーコンピュータ「富岳」と接続することで、量子コンピュータと古典コンピュータ双方の利点を生かし、従来にない大規模計算の実現が進んでいる。
(注2)米国オハイオ州に本部を置く世界的に著名な非営利の統合型医療機関。
(注3)読みやすくシンプルな文法が特徴のオープンソースな高水準汎用(はんよう)プログラミング言語。
(遠藤壮一郎)
(米国、日本)
ビジネス短信 901127cdd41095f2






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