訪日客のニーズをいかに輸出につなげるか、小江戸川越で越境ECセミナーを開催
(日本)
調査部調査企画課
2026年03月12日
埼玉県川越市とジェトロは2月25日、インバウンド(訪日外国人客)のニーズを輸出に生かす手法をテーマにした越境EC活用セミナーを共催した。川越市は蔵造りの町として知られ、年間約70万人のインバウンドが訪れる埼玉県を代表する観光コンテンツを有する(注1)。セミナーには、こうした観光需要を輸出ビジネスの第一歩とすることを目的に、県内の食品小売、伝統工芸品、商社など15の事業者が参加した。
ジェトロデジタルマーケティング部ECビジネス課の志賀大祐課長代理は「川越を訪れるインバウンドのリアルな声から、顕在化していない新たな需要に気づくことが肝要。旅ナカ(訪日中)消費拡大の施策にあわせ、旅アト(帰国後)の販路開拓につなげるマーケットインの視点を意識すべきだ」と強調した。
同セミナー参加者で、鰻(うなぎ)を中心とした和食料理店を展開するニュー富士の山田真大取締役は「以前、輸出商談会に参加したがバイヤーからのロット要件が合わず断念した。ジェトロのJapan Street(注2)は輸出初心者でも取り組みやすく、小ロットでも登録できる点が魅力なので早速挑戦したい。11月にはラボたま(注3)と連携し、鰻の食文化体験ツアーの販売を開始したばかり。越境EC、インバウンドの両面で海外ビジネスの縁を広げたい」と意欲を示した。
川越市のシンボル「時の鐘」(左)、セミナーの様子(右)〔DMO川越提供(左)、ジェトロ撮影(右)〕
インバウンドの高付加価値体験で地域の持続的な活性化へ
観光地域づくり法人DMO川越
の岩堀みどり事務局長によると、市内での観光客の平均消費額は、日本人に比べてインバウンドが約2.5倍であり、その消費力に期待が寄せられている。一方、単に消費額を増やすだけでは地域の持続性は高まらないため、川越の魅力を深く知ってもらう付加価値の高い商品づくりを地域の事業者と進めている。世界農業遺産である武蔵野の落ち葉堆肥農法を学ぶ収穫体験と料亭での食事を組み合わせた企画では、タイ人の親子が1人13万円で参加した例もあったという。こうした取り組みを通じて、価格だけでなく川越の本質的な価値を評価するインバウンドを増やし、海外との良質な交流や地域の関係人口の拡大につなげることが期待される。
岩堀みどりDMO川越事務局長。川越市のマスコットキャラクター「ときも」とともに(ジェトロ撮影)
(注1)川越市は「蔵造りの町並み・小江戸川越」として知られ、黒漆喰(しっくい)の蔵や時の鐘に象徴される江戸期の職人文化や商家の営みが息づく歴史的景観が特徴。令和6年の外国人入込観光客数は前年比14%増の69万9,000人と過去最高を記録。国・地域別では台湾、香港、米国の順。東京23区から電車で30分とアクセスが良く日帰り観光客の取り込みは成功しているが、宿泊者は訪問客の約1割と、宿泊需要の拡大余地がある。また、川越を訪問するインバウンドの9割以上は、訪日経験が2回目以上のリピーター客であり、初回訪日者に対する認知拡大も並行して重要な施策となり得る。
(注2)「Japan Street」はジェトロが招待した海外バイヤー(海外に販路を持つ国内のバイヤーを含む)専用のオンラインカタログサイト。約1万1,000社の日本企業が自社商品を掲載し、約120の国・地域、6,700人以上の海外バイヤーへ発信している(2026年2月現在)。
(注3)「地域デザインラボさいたま」の略。埼玉りそな銀行の100%子会社で、地域課題の解決やまちづくり・産業創出・観光支援などを通じた地域の発展をサポートしている。
(田中友香莉)
(日本)
ビジネス短信 82b6958168bc0a08






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