米国国際貿易委、中国原産の黒鉛の輸入による国内産業損害を認定せず、AD・CVD見送りへ

(米国、中国)

ニューヨーク発

2026年03月16日

米国国際貿易委員会(USITC)は3月12日、中国原産の黒鉛(グラファイト、注)に対するアンチダンピング関税(AD)および補助金相殺関税(CVD)の賦課の是非を判断する調査において、同製品の輸入が米国内産業を阻害していないとの最終決定を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、同製品に対するADおよびCVDの賦課は見送られることとなった。

AD・CVDは、WTO協定で認められた貿易救済措置だ。ADは輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で課す。CVDは政府補助金を受けて生産などがされた製品の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で課す。

AD・CVDを課すための具体的な手続きは、WTO協定に従い各国が国内法で定めている。米国では、(1)USITCによる国内産業の損害有無の仮決定、(2)商務省国際貿易局(ITA)によるダンピングや補助金の存在の有無および、ある場合の税率の仮決定、(3)ITAの最終決定、(4)USITCの最終決定の4段階を経る必要がある。

ITAとUSITCは2024年12月に負極活物質(AAM)を製造する国内業界団体からの請願を受理し、中国原産のAAMに対するAD・CVD調査を開始した。今回の最終決定は第4段階に相当し、2026年2月にITAが発表した最終決定(2026年2月16日記事参照)を覆すものとなった。また、米国税関・国境警備局(CBP)は、ITAによる仮決定後、対象貨物の輸入者から暫定的な現金預託の徴収を開始しているため、今回のUSITCによる最終決定により、CBPが徴収した預託金は輸入者に還付される。また、USITCは今回の調査に関する報告書を4月26日までに発表し、USITCのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載する。

AAMを巡り、テスラやパナソニックなど在米主要電池メーカーは、輸入材が満たす性能基準と同等の水準の材料を、米国内の負極材メーカーはまだ生産できていないとして、中国産の材料に対するAD・CVD賦課に反対していた(政治専門紙「ポリティコ」2月12日)。

(注)今回の調査の対象は、AAMとして用いられる黒鉛で、対象範囲は、2026年2月に発表された官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの付属書I「調査の範囲(Scope of the Investigation)」に記載されている。

(滝本慎一郎)

(米国、中国)

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