裾野広がるリトアニア宇宙産業、関連企業・研究機関4者に聞く

(リトアニア)

調査部国際経済課

2026年03月27日

リトアニアの宇宙産業は、小型衛星や光通信といった宇宙のインフラ関連技術に加え、衛星運用支援、地球観測(EO)データ活用、宇宙食、人工知能(AI)連携など、周辺領域を含めた裾野産業についても広がりを見せている。ジェトロは2月27日、リトアニア・イノベーション庁の協力の下、宇宙関連企業や研究機関4者に対し、それぞれの強みなどを聞いた。

宇宙関連ソフトウエア・機器分野で活躍するブラックスワンスペース(Black Swan Space外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、衛星の自律運用を支えるシミュレーター(Mission Design Simulator)と、接近・近接運用向けの航法機器(RPO kit、注1)を開発している。同社の特徴は、衛星本体の製造ではなく、デブリ除去、ドッキングなどに必要な「衛星同士を安全に近づける技術」に特化したニッチな技術だ。シミュレーターは、ドッキングや燃料移送シナリオ、衛星のカメラビューの再現などにも対応しており、地上での事前検証や大学などの教育機関で活用されている。また、同社の製品は、光学センサーやレーザー距離計などを1つのユニットに集約している点も特徴的だ。最高顧客責任者のトマス・マリナウスカス氏は「(同製品を)世界初となる既製品での運用キットとして他社の人工衛星に提供し、実装できる存在を目指している」と語った。

地球観測(EO)データ活用分野では、コエトゥス(Coetus外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が既存衛星データを取得・処理・提供するかたちで、農業や森林分野、都市開発、災害対策での意思決定をサポートしている。同社の特徴は、画像解析技術と行政機関との連携にある。農業におけるエリア監視に強みを持ち、草刈りの状態や作物、収穫の状況をモニタリング、報告することで農政を支援する。さらに、高度な衛星データ解析により土壌水分や土壌侵食、洪水、収量推定などの分析も進める。同社は、将来的な展開先としてアフリカに関心を示しており、同地域における日本企業との農業支援分野での連携可能性を示唆した。

食品分野では、スーパーガーデン(Super Garden外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)がフリーズドライ技術を活用した高機能食品を展開し、宇宙関連案件に加えて軍用など特殊用途にも取り組む。同社の特徴は、製造技術だけでなく、長期保存性、栄養価の向上、携行性といった機能を用途別に設計している点だ。現在は欧州宇宙機関(ESA)と契約した宇宙用スナックの開発に加え、軍用食をリトアニア、ドイツ、ウクライナ向けに展開しているという。一方で、一般消費者向けにはフリーズドライのアイスクリームなども展開しており、日本でも販売実績があるなど宇宙・軍用・民生をまたぐ製品ポートフォリオが特徴だ。

研究機関では、ビリニュス大学のAI研究室が、地球観測(EO)データ解析に大規模言語モデル(LLM)を活用する研究を進めている。ヒアリングでは、農業や都市環境についての衛星画像解析を自然言語(注2)で扱う、チャットボット型インターフェースの開発が紹介された。同研究室では、衛星データを専門家でなくても解析できるように翻訳する技術の開発に取り組む。例えば、利用者が関心領域を選び、自然言語で衛星画像分析を指示すると、言語モデルが適切な手法を呼び出し、分析結果を提示する仕組みを構想しているという。商用化はこれからの段階だが、宇宙データ利用の裾野拡大に向けた大学発技術シーズとして注目される。

(注1)RPO(Rendezvous and Proximity Operation:ランデブー・近接オペレーション)。軌道上での他衛星や対象物への接近・離脱・観測・ドッキングを含む活動のこと。

(注2)人間が日常的なコミュニケーションのために自然に発展させてきた言語のこと。

(峯裕一朗、山田恭之、金杉知紀、遠山宗督)

(リトアニア)

ビジネス短信 7084f7e72b17efc8