トランプ米大統領、住宅建設と住宅ローン関連の規制緩和を指示する2つの大統領令に署名

(米国)

調査部米州課

2026年03月19日

ドナルド・トランプ米大統領は3月13日、住宅価格の高騰と供給不足への対応として、「住宅建設コスト抑制に向けた規制撤廃」に関する大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。高止まりする住宅価格とローン金利により、国民の住宅取得能力(アフォーダビリティー)は過去最低水準といわれ、中間選挙(11月)を前に国民の不満解消が急務となっている。本大統領令は、環境規制、エネルギー基準、許認可手続きなどが住宅建設コストを押し上げているとし、関係省庁に対し規制の見直し・簡素化を指示する。特に都市郊外における一戸建て住宅や「製造住宅」(注1)の供給拡大を重視する。

また、陸軍省陸軍工兵隊と環境保護庁(EPA)に対し、建設時の雨水、湿地、湖沼、河川、その他の水関連規制の要件を精査・見直すよう指示した。許認可プロセスの迅速化や重複排除を通じ、住宅建設コストや保険料、固定資産税負担の軽減につなげる狙いだ。商務省経済開発局(EDA)、住宅都市開発省(HUD)、運輸省(DOT)、連邦住宅金融庁(FHFA)に対しては、郊外での住宅開発を制約しているとされる各種プログラムやガイドラインの改革を求めた。

さらに、農務省(USDA)、HUD、エネルギー省(DOE)、FHFAには、住宅に適用されるグリーン建築基準(エネルギー効率、水使用、再生可能エネルギー関連の基準など)について、過度な負担となっていないか検証し、必要に応じて緩和・改革を行うよう指示した。

同時に発表されたファクトシートでは、迅速な許認可、建築・設計義務の緩和、いわゆる「グリーン建築コード」(注2)の抑制など、住宅供給を促進するうえで規制上のベストプラクティスを採用する州・地方政府に対して、インセンティブを付与する方針を示した。

また、トランプ大統領は同日、住宅ローン規制の見直しを関係省庁に指示する大統領令「住宅ローンへのアクセス促進」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにも署名した。同令は、ドッド・フランク法(注3)以降に強化された規制が住宅ローンの貸し付け・管理コストを押し上げ、特に地域銀行の住宅ローン市場からの撤退を招いたとし、信用力のある借り手が住宅ローンを利用しやすい環境を整えることを目的としている。

同令では、消費者金融保護局(CFPB)に対し、地域銀行や小規模銀行(資産1,000億ドル未満)が住宅ローン事業へ参画しやすくなるよう、返済能力確認(ATR)や適格住宅ローン(QM)要件、開示規則(TRID)などに関する規制の見直しを検討するよう求めた。また、連邦住宅貸付銀行(FHLB)に対し、初回購入者(一次取得者)向けの住宅・持ち家購入ローン、小規模住宅建設業者を対象としたFHLB流動性プログラムの創設を、銀行監督当局に対しては、形式的な規制順守よりも健全な与信判断を重視する監督姿勢への転換などを指示した。さらに、住宅ローン手続きのデジタル化を通じた省力化・迅速化も盛り込まれた。

住宅供給拡大を狙うこれら2つの大統領令は、住宅取得の「供給」と「融資」の両面から住宅価格の抑制を図る政策パッケージと位置付けられる。

(注1)manufactured housingと呼ばれ、州建築基準に基づいて建設される一般住宅とは異なり、連邦建築基準(HUDコード)に基づき、工場で完成品として製造され、現地に設置される中・低所得者層向け住宅。

(注2)バイデン前政権で脱炭素化を推進するために取られた厳格な建築基準を指す。

(注3)2008~2009年の世界金融危機(リーマン・ショック)を受けて、2010年に成立した米国の金融規制強化法。金融機関に借り手の返済能力確認や手続き規制強化を課し消費者保護を強化したが、規制負担の増大により小規模銀行の住宅ローン供給縮小を招いたとの指摘がある。

(岩井晴美)

(米国)

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