衛星データ基盤で欧州宇宙産業を支える、ポーランドのクラウド企業クラウドフェロに聞く

(ポーランド)

ワルシャワ発

2026年03月13日

宇宙産業では、衛星が取得する膨大なデータを保存・処理し、利用可能なかたちで提供するデータ基盤の重要性が高まっている。欧州でも、農業、災害対応、重要インフラ監視など他分野における地球観測データの利用が拡大しており、クラウドを中心とした宇宙データインフラの整備が進む。

こうした分野で存在感を高めているのが、ポーランドのクラウドフェロ(Cloud Ferro)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。同社は2015年設立の衛星データ向けクラウドサービスプロバイダーで、欧州宇宙機関(ESA)やEUの地球観測プログラム「コペルニクス(Copernicus)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」向けに、衛星データの保存・処理を担うクラウドサービスを提供している。地球観測データの活用が広がる中、宇宙データインフラを担う企業として欧州の宇宙産業で存在感を高めている。同社に事業の概要や今後の展望を聞いた(取材日:2月26日)。

同社の中核事業は、コペルニクス・データリポジトリ(注1)にアクセス可能なパブリッククラウドサービスの提供だ。また、宇宙・非宇宙分野の事業者向けのプライベートクラウド環境の構築に加え、遠隔地を含む各拠点におけるインフラの展開・運用も手掛けている。さらに、ハードウエアからオープンソースの仮想化基盤まで、技術スタック(注2)全体を自社で一貫して管理し、これらのソリューションを支えている。

画像 (画像左)クラウドサーバーの様子、(画像右)地球観測プログラム「コペルニクス」から得られる衛星画像データ(ともにクラウドフェロ提供)

(画像左)クラウドサーバーの様子、(画像右)地球観測プログラム「コペルニクス」から得られる衛星画像データ(ともにクラウドフェロ提供)

同社の強みは、衛星データ処理に特化したクラウド基盤と信頼性だ。衛星データの保存・処理をサービスレベル契約(SLA)に基づいて提供し、データのトレーサビリティーを確保することで、人工知能(AI)や機械学習(ML)モデルの学習に使用されるデータの検証性を担保している。また、オープンソース技術を活用したAI/MLサービスを提供し、データ解析の試験環境から本番運用まで対応できる点も特徴だ。こうした基盤は宇宙分野のインフラプロジェクトでも活用されており、同社は顧客の要望に合わせたデータ基盤の構築や統合を担う独立系サービスプロバイダーとしても事業を展開している。

ほかにも、遠隔地でも運用可能なコンテナ型クラウド施設「クラウド・アウトポスト(Cloud Outpost)」の展開も進めている。これにより、研究拠点やデータセンターの整備が難しい地域でも、衛星データの処理環境を迅速に構築できるという。今後も欧州を中心に宇宙データ利用の拡大が見込まれる中、クラウド基盤を通じたデータ流通と活用の支援を強化していく考えだ。

同社は、ESAや欧州気象衛星開発機構(EUMETSAT)をはじめとする欧州の宇宙関連機関に対して、データ基盤の構築・運用面で寄与できる強みを有しており、今後は欧州宇宙産業への参入を検討する日本企業にとっても有益な足掛かりとなる存在を目指しているという。さらに、欧州各地で培ってきたプロジェクト実績を基に、日本の宇宙エコシステムを対象とした提案にも積極的に取り組んでいく姿勢を示しており、日本企業との連携にも前向きな姿勢を示している。

(注1)データを一元管理する場所のこと。

(注2)あるシステムやサービスを構築・運用するために使用する技術の組み合わせのこと。

(金杉知紀)

(ポーランド)

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