マスク氏、米テキサス州で250億ドル規模の半導体製造計画「TERAFAB」を発表

(米国)

ヒューストン発

2026年03月26日

米国の実業家イーロン・マスク氏は3月21日、自身が経営するテスラ、スペースX、エックスエーアイ(xAI)の3社が共同で250億ドルを投じる半導体製造プロジェクト「TERAFAB(テラファブ)」をテキサス州オースティンで始動すると発表した。同地のテスラ本社「ギガファクトリー」付近に先端技術工場を建設し、半導体製造工程の全てを1つの施設で完結させ、2ナノメートルプロセス製品を数十億個規模で生産する構想だ。

テラファブの規模は1億平方フィート(約929万平方メートル)に達する可能性があり、これはテキサス州テイラーで建設中の韓国サムスンの半導体工場の12倍に相当する。同施設で生産されるチップの年間演算能力は地上で100~200ギガワット(GW)、宇宙では1テラワットに達するという。マスク氏は、現時点において世界全体で生産される人工知能(AI)チップによる演算能力は年間約20GW「しかない」ところ、自身の構想の実現のために必要な計算能力はその50倍以上に上るとして、「足りないなら自社で作るしかない」と強調した。

テラファブで生産されるチップは地上用と宇宙用の2種類で、地上向けは自動運転車やテスラの人型ロボット「Optimus(オプティマス)」の推論処理を担い、宇宙向けは宇宙空間で稼働するAI衛星のために高温環境でも動作するチップとして設計される。宇宙空間におけるAI演算能力の拡張は、太陽光エネルギーを地上の5倍以上利用できる利点を生かし、衛星上に大規模なAIデータセンターを構築する構想と結びついている。スペースXは宇宙AIデータセンター構想を進めており、マスク氏は100キロワット級の小型衛星から、将来はメガワット級の衛星を運用する計画にも言及した。これらの宇宙展開のため、同社は最大500億ドル規模の新規株式公開(IPO)を行う、と報じられている。

マスク氏はさらに、将来的に月面に電磁マスドライバー(注1)を設置し、AI衛星を深宇宙へ送り込む構想も語った。スペースXの宇宙ロケット「Starship(スターシップ)」の輸送能力を使って、年間100万トン超のペイロード(注2)を地球周回軌道へ投入することを目標に掲げており、計画実現は物理的にも可能としている。

テラファブはテキサス州にとっても経済的インパクトが大きく、イベントには同州のグレッグ・アボット知事(共和党)も出席し、州として歓迎する姿勢を見せた。

他方、メディア報道では、チップ設計からフォトマスク、製造、テスト、パッケージングまでを1つの建物内で行うのは、複雑な装置群の同期・歩留まり管理が極めて難しいことを指摘され、巨額投資と前例のない規模の工程統合が不確実性を伴うとして、懐疑的な見方もある。しかし、過去に電気自動車や再利用ロケットを実現してきたマスク氏の実績から、新たな産業構造を生み出すことも期待されている。

(注1)電磁力で物体をレール上で超高速に加速し、ロケットを使わず宇宙へ射出する巨大装置。

(注2)ロケットが地球周回軌道に投入する荷物とその重量のこと。

(キリアン知佳)

(米国)

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