サプライチェーンに潜む人権リスクへの備え、横浜で実務対応セミナー開催

(日本、世界)

調査部国際経済課

2026年03月02日

ジェトロは220日、横浜貿易協会と共催で「サプライチェーンに潜むリスクへの備え、人権課題と実務対応セミナー」を横浜市で開催した。日本のビジネスと人権に関する行動計画(NAP)が2025年12月に改定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされるなど、企業に人権尊重の取り組みを求める動きが加速している。本セミナーでは、企業に求められる取り組みやサプライチェーン上で発生しやすい人権リスクなどを専門家とジェトロ、神奈川県企業がそれぞれ解説した。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

まず、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業からパートナー弁護士の湯川雄介氏(ヤンゴン事務所代表)と根本剛史氏、アソシエイト弁護士の長岡隼平氏が登壇した。根本氏がビジネスと人権の基礎について解説。人権は「人として持っている当然の権利」であることから、企業は経営リスク回避のためではなく、「当たり前のこと」として人権尊重責任を果たす必要があるとした。続いて長岡氏が、人権デューディリジェンス(DD、注1)におけるリスクの特定・評価プロセスについて説明した。サプライチェーン全体を見渡して、負の影響を受け得る人が誰であるかを把握することが第一歩となる。さらに湯川氏は、日本企業が人権尊重の取り組みを進める上での課題とポイントを解説した。サステナビリティー推進部門と事業部門、本社と海外拠点などで人権尊重に対する意識の差が生まれやすいことなど、実務上の課題は多様だが、湯川氏は前提として「ビジネスと人権に完璧はない」ことを強調した。国連「ビジネスと人権に関する指導原則PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に沿って、できることから少しずつ取り組むことが重要だという。

写真 左から順に、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の長岡氏、湯川氏、根本氏(ジェトロ撮影)

左から順に、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の長岡氏、湯川氏、根本氏(ジェトロ撮影)

続いて、ジェトロ調査部国際経済課の峯裕一朗職員が登壇。ジェトロが実施したアンケート調査の結果(注2)を基に、「日本企業の人権DDは着実に進展している」としつつも、企業規模・業種によって取り組みに差が開いていることや、取引先への人権DDの浸透に課題がある現状を報告した。

写真 ジェトロの峯職員(ジェトロ撮影)

ジェトロの峯職員(ジェトロ撮影)

最後に、横浜市に所在するアマノ(注3)が事例紹介を行った。広報部広報課専門課長の秋山吉弘氏は、人権尊重の取り組みに関するこれまでの経緯を紹介。アマノは2021年、コーポレートガバナンス・コードの改定(注4)をきっかけに人権方針を策定し、翌2022年に人権DDを開始した。資材本部グローバル調達企画部課長の中井真理子氏は、資材本部での取り組み内容を紹介した。資材本部では、主要取引先(1次サプライヤー)に対してアンケートを実施し、取引先における人権課題を特定している。アンケートで「人権問題が認められた際に原因究明や再発防止策を講じる仕組みはない」と回答した取引先には、通報・相談窓口の設置方法など具体的な改善策を提案している。

写真 左から順に、アマノの中井氏、秋山氏(ジェトロ撮影)

左から順に、アマノの中井氏、秋山氏(ジェトロ撮影)

(注1)人権DDとは、企業が引き起こし、助長し、直接関連する人権への「負の影響」について特定・評価し、潜在的な影響についてはこれを予防し、実際の影響については適切な手段を通じて軽減・是正し、その進捗と結果について外部に開示する継続的なプロセスを意味する。

(注2)ジェトロ「2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」「2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」参照。

(注3)アマノは、勤怠管理システムや駐車場のシステム、空気を綺麗にするための環境システム、清掃ロボットなどを手掛ける。

(注4)コーポレートガバナンス・コード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、東京証券取引所上場企業が持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、透明・公正な意思決定を行うための指針。2021年の改定でサステナビリティー対応の強化が求められるようになり、その中で「人権の尊重」も主要課題として明記された。

(宮島菫)

(日本、世界)

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