ドイツ産業界、メルツ首相と会談で競争力強化へ7項目の改革要請
(ドイツ)
ベルリン発
2026年03月11日
ドイツの4経済団体(注1)は3月6日、ミュンヘンの国際手工業専門見本市(IHM)に合わせて、フリードリヒ・メルツ首相と会談した。本会談は1965年からの恒例行事で、産業界と政権の対話の枠組みとして実施されている。4団体は共同声明を発表
し、3年間の成長停滞(2026年3月9日記事参照)を経て、多くの指標は回復力が弱まり転換点に向かっていると指摘。2026年を「改革の年」とするよう強く求めるとともに、ドイツ経済は企業や事業者に実感できる変化が訪れるまで好転することはないと、警鐘を鳴らした。
共同声明では、ドイツ経済の成長と競争力を強化・確保するために、今緊急に必要とされる具体的な変化として7つの要請をまとめた。
- 社会保障制度を将来にわたって持続可能に:保険以外の給付の全面的な税財源化、医療・介護保険の早急な対応、年金受給年齢引き上げ、早期退職インセンティブの廃止。
- 税金を国際的に競争力のある水準へ:法人税引き下げの前倒しと所得税の税率調整。事業資産への相続税による資本課税強化には反対。
- 官僚機構の削減:情報提供・報告義務の3分の1、文書化義務の2分の1を廃止。取り組みの迅速化。
- エネルギーコスト削減:電力税引き下げなどの短期措置と、送電網拡充などによるコスト削減のための構造改革。
- 計画および認可手続きの迅速化:長期化する手続きが成長・イノベーションを阻害。インフラ未来法の策定と加速協定(注2)・近代化アジェンダ(注3)の着実な実施が不可欠。
- イノベーションとレジリエンスの促進:学術からビジネスへの技術移転の専門化、安全保障と研究の連関強化、民間投資環境の改善。
- EU域内市場と国際貿易の強化:経済的自由を中心に規制・行政負担を削減。メルコスールおよびインドとの自由貿易協定の速やかな発効。
会談後の記者会見でメルツ首相は、「連邦政府の最優先事項は、ドイツ経済の競争力を完全に回復させること」と語り、そのため政権発足以降の9カ月間、連立協定の合意事項を法律化するため努力してきたとコメントした。
経済紙「ハンデルスブラット」(3月6日)は、経済界からの要求は既に繰り返し述べられているものであり、かつて首相に抱いていた期待は不信感に取って代わられたと、厳しく論評した。
(注1)ドイツ雇用者協会連盟(BDA)、ドイツ産業連盟(BDI)、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)、ドイツ手工業中央連盟(ZDH)。
(注2)2023年11月に連邦政府と16州が合意した、ドイツの計画・認可・実施手続きの迅速化に向けた包括的な措置パッケージ。
(注3)2025年10月に閣議決定した、効率的なデジタル国家への変革を目指す戦略。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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