ドイツ、「国家経済保護戦略」を閣議決定、企業のレジリエンス強化を図る
(ドイツ)
調査部欧州課
2026年03月30日
ドイツ連邦政府は3月18日、「国家経済保護戦略」(注1)を閣議決定したと発表(プレスリリース
、ドイツ語)した。3月19日に連邦内務省がその内容を公表した(プレスリリース
、文書
、ドイツ語)。
連邦内務省によると、企業や研究機関が、スパイ活動、サボタージュ、サイバー攻撃の標的となるケースが増加しており、本戦略はドイツ企業の生産、サプライチェーン、研究開発・イノベーション活動における安定性と強靭(きょうじん)性を、安全保障上のリスクや脅威に対して強化することを目的としている。特に、物理的、デジタル、ハイブリッドな脅威からの保護に重点を置いており、政治・行政・経済界のあらゆる分野が緊密に連携する統合的な経済の保護を目指すとしている。
この上位目標の下、次の3つの中核目標が掲げられている。
- 企業を取り巻く制度的枠組みの整備および治安・安全保障当局の支援・対応能力の発展
- 官民の連携を通じた集団的レジリエンスの向上
- 経済分野および学術分野における各主体のレジリエンスの向上
連邦政府は、経済界、業界団体および中小企業を含む個々の企業との既存のオープンな対話を継続・深化させるとしており、学術的知見を取り入れつつ、計画中の「国家経済安全保障戦略」(注2)など他の取り組みや戦略との連携を図る方針だ。
産業界は歓迎、レジリエンスは企業の優位性であり魅力
ドイツ産業連盟(BDI)は、連邦政府が本戦略を通じて経済保護を初めて包括的かつ統合的な概念として提示し、ドイツの安全保障政策の枠組みの中に位置づけたとして歓迎の意を表明。本戦略が企業、バリューチェーン、サプライチェーン、研究・イノベーションのレジリエンスを中核に据えている点と、前提条件として国と経済界との緊密な協力を強調している点を高く評価した。一方で、運用面での具体性には欠けるとも指摘している。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は、本戦略は強靭なビジネスモデルを企業が構築する責任を強調しており、投資コストはかかるがその価値があるものだと説明。レジリエンスは競争優位性であり、攻撃や障害に備えている企業は協業パートナーとしても魅力的だとした。重要なのは、あらゆる事態に備えることではなく、自社の弱点を把握し、特定したリスクを最小限に抑え、いざというときに迅速に対応できる体制を整備することだと指摘している。
(注1)BDIによると、「経済保護」(Wirtschaftsschutz)とは、「経済安全保障」(Wirtschaftssicherheit、Economic Security)の枠組みにおける中心的な柱であり、企業、サプライチェーン、技術革新、知的財産、知識保有者を、スパイ活動、サボタージュ、サイバー攻撃、あるいはハイブリッド型の影響工作などの安全保障上の脅威から保護すること。
(注2)BDIによると、「経済安全保障」(Wirtschaftssicherheit、Economic Security)とは、国民経済のレジリエンス、競争力、戦略的行動能力の強化のための包括的な政治的枠組み。
(近藤慶太郎)
(ドイツ)
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