イングランド北東部に水素・CCUSミッション派遣、脱炭素クラスター形成動向を視察
(英国)
ロンドン発
2026年03月19日
ジェトロは2月16~18日、英国イングランド北東部のティーズサイド地域およびハンバー地域に水素、二酸化炭素(CO2)回収・利用・貯留(CCUS) 分野のビジネス環境視察ミッションを派遣した。商社やインフラ事業者、メーカーなどエネルギー関連企業や公的機関など20社・団体が参加した。
初日は、ティーズサイド地域を訪問し、同地域の5つの自治体を統括する広域自治体ティーズバレー(TVCA)やノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(NEP)関係者などから説明を受けた。ティーズサイドは、鉄鋼・化学など重工業が集積する地域であり、脱炭素産業クラスターへの転換が進められている。TVCAによると、2040年までに約100億ポンド(約2兆1,300億円、1ポンド=約213円)の投資と約2万8,000人の雇用創出を見込む。
同地域の中核案件は、ガス火力発電とCO2回収を組み合わせたネット・ゼロ・ティーズサイド・パワー(NZTパワー)と、CO2輸送・貯留インフラを整備するNEPだ。NEPには、英国の石油大手BP、ノルウェーの石油大手エクイノール、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズが出資し、2024年に最終投資決定(FID)に至った(2024年12月17日記事参照)。産業施設から回収したCO2をパイプラインで集約し、北海の海底帯水層に貯留する計画で、2028年までのCO2貯留開始を目指している。
サイト視察では、旧製鉄所跡地を再開発するティーズワークス(Teesworks)や、化学工業団地ウィルトンインターナショナル(Wilton International)、産業ガス企業BOCの施設を視察した。ティーズワークスでは、NZTパワーをはじめ、水素や再生可能エネルギー(再エネ)など低炭素エネルギー関連の投資誘致が進められている。ウィルトンインターナショナルでは、既存パイプラインや発電設備などのインフラを活用したエネルギー転換関連投資が進められている。例えば、バイオ発電所から排出されるCO2と水素を反応させて液体燃料を製造するパワー・ツー・リキッド(PtL)技術によるメタノール製造の導入が検討されており、メタノールは燃料用途に加え、エチレンや芳香族化学品など基礎化学原料としての利用も見込まれる。BOCでは、現在は水蒸気メタン改質(SMR)によるグレー水素を供給しているが、CO2輸送・貯留インフラの整備後にはブルー水素プロジェクトの実装が進む可能性があるとの説明があった。
(左)TVCAによるブリーフィング、(右)高台から望むティーズサイド産業クラスター(ともにジェトロ撮影)
ハンバー地域では、地方自治体や港湾、大学、再エネ事業者などから、地域の産業構造やエネルギー転換戦略について説明を受けた。ハンバーは英国最大のCO2排出地域であり、脱炭素化が喫緊の課題となっている。洋上風力関連産業の集積地という地域の特性を生かしたグリーン水素120メガワット(MW)の製造、ブルー水素720MWの製造、CCUS対応の発電所の建設、持続可能な航空燃料(SAF)の製造などの案件が検討されている。ソルトエンド・ケミカル・パークやVPIイミンガム熱電併給プラント、熱プラズマ電解による水素製造技術を開発するヒーロック(HiiROC)などの施設を訪問した。
参加日系企業からは、「各ステークホルダーとの連携を模索する上で参考になった」「水素プロジェクトの全体像を把握でき、今後のビジネスのヒントを得られた」との声が聞かれた。
(森詩織、バリオ純枝、山根夏実)
(英国)
ビジネス短信 0303ce7bd2ca1e3e






閉じる