ジェトロ、米国関税・移転価格実務対策に関するウェビナー開催
(米国、日本)
ニューヨーク発
2026年02月17日
ジェトロは1月21日、「米国関税・移転価格実務対策―基礎からトランプ関税を見据えた対策まで―」と題したウェビナーを開催した。製造業、商社、金融業や通関業務を担う運輸・倉庫業などの関係者を中心に、360人以上が参加した。同ウェビナーは、ジェトロの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム事業」の一環として開催したもので、同事業の税務・会計コーディネーターを務める堀田リーゼンバーグ齋藤会計事務所(Hotta Liesenberg Saito LLP)の高名祐治氏、新井ケイト氏が講師として登壇し、米国関税制度の基礎から最新動向、関税制度と移転価格税制の関係、実務上の具体的な対応策まで、企業実務に直結する内容を体系的に解説した。
高名氏、新井氏による講演の概要は次のとおり。
米国では現在、関税制度および移転価格税制を巡る不確実性が高まっている。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の合憲性を巡っての審理は連邦最高裁で進められているが、仮に違憲判断が下された場合であっても、関税還付制度の確立までには相当の時間を要する可能性がある。このため、企業としては、輸入申告期限を踏まえた異議申立てや米国の国際貿易裁判所(CIT)への提訴といった予防的措置を講じるなど、早期の権利保全が重要になる。
また、通商拡大法232条に基づく関税の対象拡大が続く中、米国の関税法の基本的な考え方である「合理的な注意義務(Reasonable Care)」の徹底があらためて強調された。当該義務に対する責任は、通関業者でなく、あくまで輸入申告者に帰属する。関税のペナルティーは非常に重く、確認不足や誤申告を含む不適切な対応は、多額な罰金支払いや場合によっては個人責任にも及ぶリスクがある点に留意が必要だ。
さらに、高関税環境下における輸入価格の過度な引き下げは、税関から関税評価の適正性について説明を求められる可能性を高める。また、輸入者側と資本関係がある場合、米国子会社の赤字を放置すると、設定している「移転価格」が適切かどうか、税務当局に疑われるリスクにつながる可能性がある。また、日本の親会社が関税を負担した場合には、日本側で「寄付金」とみなされ、課税のリスクが生じ得るなど、関税と移転価格の両制度を横断的に捉えた統合的なリスクマネジメントが不可欠であると指摘された。
実務上の節税策として、(1)輸入価格から輸入に関わる国際輸送費などを控除する方法、(2)移転価格を適正化した上で輸入価格を引き下げる方法のほか、(3)最大99%の関税還付が可能なデューティー・ドローバック(注1)、(4)仲介貿易において関税負担を抑制が可能なファースト・セール・ルール(注2)の活用が挙げられた。
最後に、米国の追加関税について税務上の観点で最良な対応は、当該追加コストを顧客へ転嫁することも考慮しながら、今後の様子を見ながら対策を検討していくことであることを強調した。
ウェビナー終了後のアンケートでは、「IEEPAが違憲となった場合の関税還付の実務的対応について理解が深まった」「関税制度と移転価格税制の相互関係を改めて認識する契機となった」「関税負担軽減に向け、実務に直結する有用な示唆を得ることができた」など、内容の実践性や理解促進を評価する声が多く寄せられた。
本ウェビナーは、ジェトロのウェブサイトでアーカイブ動画を配信中。
(注1)輸入した製品を輸出する際の関税払戻制度(Duty Drawback)。
(注2)輸出者が仲介者への販売価格で米国関税を申告する方法。実態のある取引であること、米国への輸出目的であること、第1次、第2次ともに独立企業間価格であることが主な要件。
(堀田基、奥修平、部谷亜里香)
(米国、日本)
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