米アプライド・マテリアルズ、サムスンのEPICセンター参画を発表

(米国、韓国)

サンフランシスコ発

2026年02月27日

米半導体製造装置最大手のアプライド・マテリアルズは2月11日、シリコンバレーのサンタクララに建設中の次世代研究開発拠点「EPIC(Equipment and Process Innovation and Commercialization」センター」に、韓国のサムスン電子が最初の設立メンバーとして参画すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国では最大規模となる半導体装置の研究開発施設となり、総額50億ドルを投じる同センターは、2026年中の稼働を予定する。最先端のクリーンルームを備え、先端半導体の研究から商用化までの期間を数年単位で短縮することを目指す。

今回の発表の背景には、半導体技術が従来の単一チップ(モノシリック)から、機能ごとに分割した小片を統合する「チップレット(注1)」設計へと大きくシフトしている現状がある。チップレットの採用により、高性能で省電力なAIチップの実現が期待される一方で、異なる工程や材料の組み合わせ、異種材料接合(ヘテロジニアス・インテグレーション、注2)などの複雑性が大きく高まっている。これにより、従来のようにデバイスメーカー、装置メーカー、材料メーカーが個別に開発を行う「直列型」モデルでは、開発スピードと歩留まりの維持が困難になりつつある(2025年7月17日記事参照)。

同社のゲイリー・ディッカーソン社長兼最高経営責任者(CEO)は「AIインフラの需要に応えるためには、業界全体でコラボレーションのあり方を再設計しなければならない」と強調。サムスンと共同で取り組むことで、最先端技術の市場投入を加速させる意向を示した。

また、同社のセミコンダクタ・プロダクトグループのプラブ・ラジャ部長は「先端半導体が複雑化する中、デバイスの性能、歩留まり、コストを最適化するには、プロセスフロー全体の主要な段階を並行して開発することが不可欠だ」とし、「並行型」の共同研究開発が同センターの目的だと述べた。共同プログラムでは、現世代から数世代先を見据えたチップ向けの材料およびプロセス技術をターゲットとし、先端パッケージング(注3)やエッチング(注4)、成膜プロセス(注5)における原子レベルのイノベーションに焦点を当てる。

こうした共同研究の潮流は、装置大手に限ったものではない。日本のレゾナック(本社・東京都)が主導するコンソーシアム「US-JOINT」もその一例だ。同コンソーシアムは、シリコンバレーのユニオンシティに研究拠点を構え、日米の材料・装置メーカー11社が参画している。後工程(パッケージング)におけるチップレット技術の検証を、現地のハイパースケーラー(注6)やチップ設計企業の近くで行うことで、市場ニーズをリアルタイムに反映した材料開発を進めている。

チップレット技術の導入により、企業間の協業・共創の重要性が増しているとみられる。

(注1)大規模な半導体集積回路を複数の小さなチップに分割し、それらを組み合わせて1つのパッケージにまとめる技術、およびそれぞれのチップのこと。

(注2)異なる製造プロセスや機能を持つ複数のチップを組み合わせて、1つのパッケージに集積する技術。

(注3)複数のチップを1つのパッケージ内に収める技術。特にチップレット設計において、2.5次元や3次元といった高度な接合技術を用いることで、半導体全体の高性能化と、省電力を実現する。

(注4)回路パターンを形成するために、化学薬品やガスを用いて薄膜を削る工程。チップレットや積層技術では、チップ間を接続するための深い穴を精密に掘るなど、高度な加工技術が必要。

(注5)ウエハー上にナノメートル単位の薄膜を形成する技術。次世代チップでは膜の均一性や品質への要求が高く、原子を一層ずつ積み上げる原子層堆積などの高度な制御技術が不可欠。

(注6)膨大な計算資源やインフラを所有し、大規模なクラウドコンピューティングサービスを提供する事業者(アマゾン、マイクロソフト、グーグルなど)。

(松井美樹)

(米国、韓国)

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