米カーネギーメロン大学、AIとロボティクスの社会実装を議論
(米国)
サンフランシスコ発
2026年02月17日
米国のカーネギーメロン大学(CMU)は2月11日、研究成果の事業化とディープテック(注1)投資を議論するイベント「CMU Lab to Market – Spring 2026」をカリフォルニア州サンフランシスコで開催した。人工知能(AI)、ロボティクス、エネルギー分野の研究者、大学発スタートアップ、ベンチャーキャピタル(VC)などが参加し、先端技術を市場価値のある製品・サービスへ転換する際の課題や機会について議論が行われた。
基調講演では、生成AI検索エンジンのスタートアップであるパープレキシティ(2024年6月24日記事参照)のアラビンド・スリニバス最高経営責任者(CEO)が登壇し、AI時代には知識量よりも「良い問いを立て、AIに適切に仕事を委ねる力」が重要になると指摘した。また、AI製品における信頼は正確性によって築かれるとして、情報源に基づく回答生成とハルシネーション(注2)の排除を重視する姿勢を強調。さらに、AIエージェントが利用者に代わって行動する社会では、継続的な精度向上こそが長期的信頼を生む基盤になると述べた。
(左)基調講演の様子、(右)パネルセッションの様子(ともにジェトロ撮影)
フィジカルAI(注3)をめぐる議論では、学習データ不足の前提にたち、物理構造を適切に理解した上でアーキテクチャーを設計することにより、少ないデータからでも動作を生成できるようにする研究成果が紹介された。また、高トルク密度(注4)のアキシアル磁束モーター(注5)の開発により、ロボットの指先に「遊び」や「柔軟性」を持たせ、人間に近い巧緻操作の実現可能性も示された。
ロボティクス分野では、同大学のセバスチャン・シーラー准研究教授は、AIモデル自体が競争の勝敗を決めるのではなく、「モデルを組み込んだシステム全体をどう構築するか」が重要だと説き、実世界の複雑な状況に対応するには、AIモデルだけでなくシステム全体の設計が必要になると強調した。また、熟練工の引退に伴う「暗黙知の継承」も課題となっており、知識のデジタル化が新たな事業機会として注目されていることも指摘された。
さらに、材料化学やバッテリー開発などディープテック領域では、同大学のリジャ・ジャイン教授により資金調達の「死の谷(注6)」が存在し、そこを乗り越えるために政府支援の役割の重要性が指摘された。
大学発スタートアップとして、ドローンによる倉庫在庫管理の自動化を手掛けるギャザーAI
、数値推論API(注7)に特化したウッドワイドAI
、2次元図面の3次元CAD(注8)化で製造効率を図るポリマス
が紹介された。
(注1)科学的成果を基盤とし、実用化までに長期間と多額の研究開発投資を要する先端技術分野。
(注2)生成AIが虚偽情報を事実であるかのように出力する現象のこと。
(注3)物理世界で動作するロボットや機器にAIを適用し、自律的な認識・判断・制御を行う技術分野。
(注4)モーターの「重さ」や「大きさ」に対して、どれだけ強い「回転力(トルク)」を生み出せるかを示す指標。
(注5)磁力線が回転軸に対して「平行(アキシアル方向)」に流れる構造を持つモーター。
(注6)基礎研究や試作開発の段階から事業化・量産化へ移行する過程で、収益化前の資金不足により研究開発の継続が困難となる資金ギャップを指す。
(注7)AIモデル(主に大規模言語モデル)を用いて、数式、統計データ、論理的な数値データ、あるいは文章題(算数・数学)を理解し、正確な計算や論理的推論を経て結果を導き出す機能。
(注8)コンピュータ上で製品や部品の設計図面を作成・編集・解析するための設計支援ソフトウエアおよびその技術。
(松井美樹)
(米国)
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