欧州化学業界、域内生産拠点の閉鎖と投資減少に強い危機感
(EU、英国、スイス、ノルウェー)
ブリュッセル発
2026年02月09日
欧州化学工業連盟(Cefic)は1月28日、欧州30カ国(注1)における化学産業の生産能力と設備投資に関する調査報告書
を発表した(プレスリリース
)。コンサルティング企業のローランド・ベルガーに委託し、2022年1月1日から2025年12月8日までの公開情報を基に集計したもの。
報告書によると、2025年の域内生産拠点の閉鎖で失われた生産能力は1,720万トンで、前年の2倍超、2022年の約6倍となった。2022年からの4年間の累計は3,700万トンに上り、これは欧州の生産能力の9%に相当する。最も減少したのは石油化学部門で、4年間で1,780万トン減となり、同部門の14%の生産能力の閉鎖が発表された。また化学業界全体で、4年間に約2万人の直接雇用、約8万9,000人の間接雇用に影響が及んだ。企業発表で言及された閉鎖の理由として最も多かったのは「エネルギー価格競争力の欠如」(49%)で、続いて「需要の低下」(19%)や「過剰生産」(9%)だった。
設備投資は、2022年の76億ユーロ(生産能力270万トン)から、2023年は24億ユーロに大幅に減少した後、減少傾向が続き、2025年は15億ユーロ(生産能力30万トン)にとどまった。2022~2025年の4年間での設備投資は、合計135億ユーロ(生産能力700万トン規模)だった。投資理由としては、需要増加の見通しによるものが最も金額規模が大きく(全体の36%)、戦略的判断(34%)、持続可能性や規制関連対応(26%)が続いた。
最も多くの設備投資が行われた分野は、バッテリー・バリューチェーン関連と温室効果ガス(GHG)排出削減関連で、それぞれ19億ユーロ(全体の14%)だった。前者は、リチウム水酸化事業やブラックマス(注2)回収などの原材料、または前駆体や正極材など部品に関連するものだった。後者では、グリーン水素を用いた化学品生産プロセスや電化、二酸化炭素(CO2)回収事業などだった。3番目に多かったのが、プラスチックを熱分解油へ転換するケミカルリサイクルなど、特に新興企業も含む石油化学企業によるリサイクル関連で15億ユーロ(全体の11%)だった。
Ceficのマルコ・メンシンク事務局長は調査結果を受け、生産能力の喪失と投資減退が年々、同時に加速していると指摘した。欧州委員会は2025年7月、化学業界への支援計画を発表し(2025年7月17日記事参照)、域内生産の維持や規制の簡素化を進めるが、同事務局長は現況への強い危機感を示し、「化学業界は2026年、生産現場で効果を実感できる決定的な行動を必要としている」と述べた。
(注1)EU加盟27カ国、英国、ノルウェー、スイスの計30カ国。
(注2)リチウムバッテリーを放電・乾燥・破砕・選別した後に得られる原料の濃縮かすのこと。
(滝澤祥子)
(EU、英国、スイス、ノルウェー)
ビジネス短信 cd92177cb4d805f5




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