CJEU、英国での使用実績に基づく商標保護はEUで無効と判断

(EU、英国)

デュッセルドルフ発

2026年02月18日

EU司法裁判所(CJEU)は2月5日、日本のアパレル企業であるノーウェアが申し立てた商標異議について、英国での使用実績に基づくブランド保護(注)をEU商標制度の根拠として認めない判断を示した。争点は、同社の人気キャラクター「ベイビーマイロ」に関連する猿の図形を英国で先に使用していた事実が、英国のEU離脱(ブレグジット)後もEU域内で効力を持つかどうかだった。

同社は、スペイン在住の個人が出願した、「ベイビーマイロ」に酷似したEU商標「APE TEES外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に対し、英国での使用実績に基づいて異議を申し立てた。しかし、EU知的財産庁(EUIPO)審判部は、ブレグジットにより英国法がEU商標制度の「加盟国の法律」ではなくなったと判断し、この権利は異議理由として扱えないと結論づけた。EUIPOの最終判断は2021年2月10日に示された。

これに対しCJEUの一般裁判所(下級審に相当)は、「EU商標の出願が行われた2015年当時は英国もEU加盟国であったため、その時点の使用実績は考慮されるべきだ」として、ノーウェアの主張を部分的に認め、EUIPOの判断を取り消していた。

しかし、上級審に相当する司法裁判所は2026年2月5日、一般裁判所の判断を覆した。判決は、出願時に使用実績があったかどうかだけでなく、EUIPOが最終決定を下す時点(2021年2月10日)でも、その根拠となる権利がEU域内で有効である必要があると明確に示した。英国は2020年末の移行期間終了によりEU法の適用外となったため、英国での使用実績に基づく権利は、もはやEUでの異議申し立ての根拠にはならないと判断された。

本件は、EU域内での商標権保護において、英国のEU離脱という制度変更が企業の権利行使に直接影響を与える可能性を示した事例だ。さらに、EUIPO審判部がいったん下した2018年の判断を「明白な誤り」として取り消し、最終判断が2021年2月までずれ込んだ経緯も判決文に記載されていることから、手続きの長期化が結果に影響した可能性を指摘する声もある。英国がEU域外となった後に最終判断が下されたことで、英国での使用実績に基づく権利がEUでの異議申し立ての根拠として扱えなくなったためだ。

EUで事業を展開する日本企業にとっては、制度変更リスクだけでなく、審査・審理に要する期間もブランド保護戦略に影響を及ぼし得ることを踏まえ、欧州での権利取得・維持の計画を適宜見直すことが重要となる。

(注)商標は未登録だが、該当の国・地域での使用実績により守られる権利。

(吉森晃、佐藤吉信)

(EU、英国)

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