アイルランドで室内ワサビ栽培に挑む日本発スタートアップ
(アイルランド、日本)
ロンドン発
2026年02月10日
室内型ワサビ水耕栽培事業を展開するアグリテックベンチャーのネクステージ(NEXTAGE、本社:東京都)は2025年12月11日、室内型ワサビ水耕栽培システムのスイス・チューリヒでの提供決定
を発表した。海外での初導入案件となる。
ネクステージは2025年8月、アイルランド・ダブリン市立大学のイノベーション・ハブであるDCUイノベート(DCU:Innovate
)に同社初となる海外拠点を設立、室内ワサビの栽培に向けた準備を進めていた。ワサビ同社最高経営責任者の中村拓也氏に事業の背景および展望を聞いた(取材日:2025年11月17日)。
中村氏によれば、欧州では日本食文化が浸透し、特にロンドン、パリ、バルセロナではワサビも受け入れられている。ただし、生鮮ワサビは、オランダや英国など欧州産生鮮ワサビ(日本原産に限らない)または日本から輸出された生鮮本ワサビが多いなか、日本からの輸出量が欧州の需要に追いついていない現状がある。日本からの輸入製品を販売しつつ、欧州産生鮮本ワサビの販売割合の拡大を目指す。さらに、欧州でのワサビのブランディングや正しい使用方法などを普及させていく。例えば、現地の料理人に室内水耕本ワサビを紹介し、ひいては欧州産本ワサビを一般消費者へ普及する計画を検討している。一方、欧州で生産し冷凍したワサビをスペインで水揚げされたマグロやサーモンと併せて輸送する際には、魚と同様に高度な冷凍技術によって鮮度を維持できるかも検証していく。
同社がアイルランド進出を決めたきっかけは、2年前に海外展開を検討していた際に、ダブリンで室内ワサビ栽培を研究していた菊澤佑也氏〔現ネクステージ・ラブ(NEXTAGE Lab)ディレクター〕との出会いだった。同社事業はアイルランド政府や関係機関から歓迎され、進出計画は着々と進んだ。アイルランドの温厚でオープンな国民性や、人口や経済の規模がほどよく、大勢の中に埋もれないのも魅力でもあった。また、アイルランドには世界各国のテック系企業が進出しており、人工知能(AI)技術を取り入れたワサビ栽培など、現地企業との協業にも期待する。
菊澤氏によれば、現地の法人設立、設備導入、物資への関税対応などの情報入手が困難だったが、それらの課題に真摯(しんし)に向き合い乗り越えることができたという。また、イノベーション・ハブへの入居理由は、ダブリン市内の一般施設だと水道配管や電気配線の確保が難しい点に加え、同ハブの利用料金も比較的妥当であったからだ。
同社は今後、実証および栽培期間として各1年間を経て、早ければ2027年に欧州産本ワサビの販売を開始する計画だ。また、5年以内に事業運営、技術サポートを担当する人材10人程度を現地で採用予定で、欧州各地のコンテナやオフィス施設での水耕栽培の展開を目指す。
DCU:Innovate内施設に設置された実証ワサビ棚(ジェトロ撮影)
(尾関康之)
(アイルランド、日本)
ビジネス短信 7c88b0403f9f73c7




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