米ロサンゼルス郡、移民摘発捜査の経済的影響に関する報告書を公表

(米国)

ロサンゼルス発

2026年02月16日

米国ロサンゼルス郡経済機会局(OED)とロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)は2月9日、連邦政府による移民摘発捜査活動がロサンゼルス郡の企業・労働者・地域社会に及ぼす経済的影響を分析し、報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は、ロサンゼルス地域における移民・関税執行局(ICE)による不法移民の逮捕・拘留などの活動が活発化した2025年6月に同郡監督委員会で可決された動議に基づいて作成されたもので、経済・労働データ、裁判記録などの定量データに加え、地元企業に対するインタビューを基に作成された。

同報告書によると、同郡には総人口の35%を占める約350万人の移民と約95万人の不法移民が存在し、不法移民労働者は約2,539億ドル(郡全体の経済活動の約17%)の経済効果を生み出すなど(注)、地域経済に大きく貢献しているという。その上で、移民摘発捜査によって、82%の企業が悪影響を受けていると回答し、52%が売り上げ・収益の減少、51%が客数の減少を経験したとしている。特に売り上げ・収益の減少を経験した企業のうち、44%が売り上げ・収益が半減したと報告。また、3分の2以上の企業が、営業時間の短縮、休業、延期などの業務調整を余儀なくされた。労働力への影響も深刻で、企業は従業員が出勤への懸念、生産性の低下、代替労働者の確保の困難さを訴えていると報告する。

なお、影響は地域間で一様ではなく、ラテン系移民、スペイン語話者、賃貸世帯、非市民労働者が集中する地域は経済的影響がより大きくなっていると分析する。バス乗客数データによると、これらの地域を運行する路線では、移民摘発捜査のピークである6~8月の月間乗客数は4月と比較して1カ月当たり約1万7,000人減少している。さらに、2025年のロサンゼルス国際空港の国際線到着者数は前年比で減少しており、移民や外国人旅行者の扱いに対する懸念を反映している可能性があると指摘する。

報告書では、移民摘発捜査が活動の域を超えて、多大な経済的損失をもたらしていることに触れ、深刻な影響を受けた地域と産業に対し資源分配を優先的に行う必要があると結論付けた。こうした中で、ロサンゼルス郡は2025年9月にロサンゼルス地域中小企業レジリエンス基金(SBRF)を設置し、経済的影響を受けた企業に対する財政支援を開始。2025年12月時点で、367の企業に対し153万ドル以上の助成金を交付しているが、非常に強い要請を受けて、今後さらに650以上の中小企業を支援予定としている。同郡経済機会局のケリー・ロビアンコ局長は「移民摘発活動は広範囲にわたる混乱を引き起こしたが、ロサンゼルス郡は緊急対応を行い、労働者と雇用主への重要な情報共有と技術支援、中小企業への現金給付、影響を受けた若者や家族への有給雇用の提供を行うことで、地域社会の安定と経済の再構築を支援している」と述べた。

(注)不法移民労働者が最も集中しているのは、小売業(不法移民労働者の23.4%)、建設業(16.2%)、その他サービス業(14.5%)、製造業(13.3%)であり、これら4分野で郡内の不法移民雇用全体の約3分の2を占めている。また、不法移民労働者への依存度が高い分野は、農業(全労働者の31%)、建設業(28.7%)、製造業(17.5%)、卸売業(16.0%)、小売業(15.4%)、運輸・倉庫業(11.8%)となっている。

(堀永卓弘)

(米国)

ビジネス短信 6d085493c052b0f9