トランプ米大統領がケビン・ウォーシュ元FRB理事を次期FRB議長に指名
(米国)
ニューヨーク発
2026年02月02日
ドナルド・トランプ大統領は1月30日、2026年5月までを任期とするジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任として、ケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名
した。FRB議長の後任人事をめぐっては、ウォーシュ氏のほか、国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長やクリストファー・ウォラーFRB理事、投資会社ブラックロックのリック・リーダー氏なども有力候補に挙がっていた。
ウォーシュ氏は、(1)2002~2006年までブッシュ(子)政権下で経済政策に係る大統領補佐官を務めるなど共和党に強いパイプを有しているほか、(2)2006~2011年までFRB理事を務め、(3)モルガン・スタンレーなど金融セクターでの在職経験も有する。今後の円滑な議会承認や、トランプ政権が早いペースでの利下げを求める中での連邦公開市場委員会(FOMC)における意見集約、市場からの信頼性の維持・確保およびコミュニケーションなど、金融政策のかじ取りに必要となり得る要素を満たしていると考えられる。
ウォーシュ氏の利下げに対するスタンスは一見すると複雑だ。FRB理事在任中にはインフレ抑制を重視するタカ派として知られていた一方、近年では利下げを積極的に支持する立場を明確にしている。この矛盾しているようにも見えるスタンスに関しては、2025年5月にフーバー研究所で行った講演
において体系的に説明されている。ウォーシュ氏は、まず、2010~2020年頃までのFRBによる量的拡大(QE)を批判する。QEは事実上、政府の財政拡張を支える役割を果たし、インフレを引き起こす一因になるとともに、財政を管理する財務省と金利を管理するFRBの役割を曖昧にさせてきたと主張する。すなわち、QEはインフレの温床となるだけでなく、中央銀行の制度的信認そのものを弱体化させてきたという認識だ。こうしたQEに伴うデメリットを排除するため、危機時を除いてはFRBのバランスシートを縮小させていくべきだと論じる。これによって、財政拡張に起因するインフレ圧力は自然と低下し、そうなれば、インフレ抑制を目的として実施されてきた高金利政策を維持する必要性は薄れ、結果として利下げが可能になると主張する。
しかし、ウォーシュ氏の主張するような金融政策運営がなされた場合、金融政策による影響が大きい短期金利は低下する一方で、長期債の大口需要者だったFRBの撤退によって長期債需要が低下し、長期金利は上昇する可能性もある。実際に、同氏の指名直後の1月30日時点では、短期金利は低下する一方、5年債以上の長期金利は上昇する動きを見せている。ドナルド・トランプ大統領がFRBに対して利下げを求める背景には、アフォーダビリティ改善の観点から、住宅ローンや自動車ローンなど、長期金利にひも付く金利の低下を期待している面もある。両者は利下げという方向性でこそ一致しているものの、こうした政権の期待と新議長の下で実施される金融政策が本当に合致するかどうかはまだわからない。
(加藤翔一)
(米国)
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