IEEPA関税の違憲判決、メキシコ経済相は冷静な反応

(メキシコ、米国)

調査部米州課

2026年02月26日

米国の連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を無効とする判決を出したことを受け(2026年2月24日記事参照)、メキシコに対して課されていた合成麻薬フェンタニルなどの流入を目的とした25%の追加関税が停止された。判決と同日、ドナルド・トランプ大統領は新しく1974年通商法122条(以下、122条)に基づく10%の課徴金を課す大統領布告を発表したが、大統領布告では米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす製品は対象外となっている。メキシコとっては、USMCAの原産品が引き続き無税で輸出できる上、非原産品についても賦課される関税率が低下する可能性がある。

マルセロ・エブラル経済相は2月20日、本件に関する記者からの質問に対し「新たな関税を課すとの発表もあり、冷静に対応する必要がある」とした。その上で、近々、米国を訪問し、直接、米国政府関係者と対話を行う予定であることを明かした。2月24日に出演したラジオ番組では、USMCAの非原産品に課される関税率が低下することで、メキシコの状況を改善するものだとの見方を示した。また、同番組内では、2月22日にメキシコ政府が麻薬カルテルのリーダーを殺害したことにも触れ、「USMCA見直し交渉においてメキシコを後押しするものだ」とした。麻薬組織対策は米国からの要求事項の1つだった。

USMCAの恩恵大きく、既に低い実効税率

先述のとおり、122条の課徴金についても、USMCAの原産品は対象外となる。米国が締結する20カ国との間の14の自由貿易協定(FTA)のうち、追加関税や課徴金の適用で特別な配慮がなされているのは、USMCAとドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(DR-CAFTA)のみだ(注)。USMCAの恩恵により、メキシコやカナダに対する米国の実効税率は、他国と比べてかなり低い。ペンシルベニア大学ウォートン校のペン・ウォートン予算モデル(PWBM)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2025年12月時点の米国のメキシコに対する実効平均関税率(追加関税などを含む)は4.47%で、主要国ではアイルランド(2.3%)、カナダ(3.25%)に次いで低い。10%を超える日本やEU、韓国と比べると有利な状況下にあるが、これはUSMCAの恩恵によるもの。その観点から、2026年7月に期日が迫るUSMCAの見直しの行方に注目が集まる。

(注)DR-CAFTAの場合、繊維製品と衣類のみ課徴金が課されない。

(加藤遥平、中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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