米シリコンバレーで日本が研究開発・実証・事業拡大の有望拠点との認識に深まり

(米国、日本)

サンフランシスコ発

2026年02月18日

米国カリフォルニア州パロアルトで25日、スタートアップや研究者による日本での研究開発および事業化の可能性をテーマとしたイベント「Why Build in Japan: An Emerging Innovation Hub(なぜ日本で作るのか:新鋭のイノベーションハブ)」が開催された。同イベントはBtoB分野に特化したプレシードアクセラレーターのアルケミスト(本社:同州サンフランシスコ)とジェトロが共催したもの。日米の起業家、投資家、大学関係者、政府関係者らが参加し、日本を研究開発・実証・事業拡大の拠点として活用する動きについて意見が交わされた。

在サンフランシスコ日本総領事館の大槻耕太郎総領事は、日本政府が進めるスタートアップ育成5カ年計画と17分野への投資戦略を紹介(注1)し、その実現には米国との連携強化が不可欠と強調した。

写真 (左)参加者でにぎわうイベントの様子、(右)パネル討論の様子(ともにジェトロ撮影)

(左)参加者でにぎわうイベントの様子、(右)パネル討論の様子(ともにジェトロ撮影)

経済産業省の飯村亜紀子イノベーション政策上席企画調整官は、日本の強みとして基礎研究力や世界水準の研究インフラ、長期投資の蓄積を挙げ、戦略分野への政策支援を拡大していると述べた。加えて、海外研究者誘致策「J-RISE Initiative外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を紹介し、研究助成や国際共同研究機会の提供を通じ、国際的な研究開発拠点としての地位向上を図るとした。

パネル討論では、アルケミストで日本事業を担当するイアン・バーグマン経営ディレクター、人気ニュースレターのノアピニオン創設者のノア・スミス氏、日本法人を創設したスタートアップのキマルAI(本社:テキサス州)のエバン・バーコスキー最高経営責任者(CEO)、人工知能(AI)分野に特化した起業支援を行うインセプション・スタジオのジョン・ウェイリー創設者兼経営パートナーが登壇し、主に次の点を指摘した。

  1. 日本の起業環境が近年、国内志向からグローバル志向へと変化している。
  2. 訪日観光客の増加、中国とのデカップリング、円安、AI投資の進展などのマクロ要因が対日関心を押し上げている。
  3. 有望分野として、プロセス自動化(注2)、レジリエンス関連技術(注3)、身体化AI(注4)などが挙げられる。これらの分野は、日本の製造基盤やロボティクス技術との親和性が高い。
  4. 高度人材の獲得競争が本格化する前の現在が日本参入の好機である。

日系企業によるリバースピッチでは、ソニー、ヤマハ、ソフトバンクなどのコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)やTOTOが参加。日本企業との実証実験(POC)創出や市場投入支援例、低炭素エネルギー分野やAI分野などへの投資方針が示され、産業間の連携を通じて日本での事業化を支援する動きが広がっていることが報告された。

最後に、日本政府によるオープンソース基盤モデル開発構想や半導体分野の国際連携枠組みが紹介され、米国研究機関との協力強化が呼びかけられた。

本イベントを通じ、研究開発と事業創出を担う有望拠点としての日本といった認識が深まりつつあることが確認された。対日投資拡大と日米連携の一層の進展が期待される。

(注1)日本政府は2025年11月4日、日本成長戦略会議を開催し、「危機管理投資」、「成長投資」の戦略分野として17分野を選定。選定分野は次のとおり。AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティー、コンテンツ、フードテック、資源・エネルギー安全保障・GX(グリーントランスフォーメーション)、防災・国土強靭(きょうじん)化、創薬・先端医療、フュージョンエネルギー、マテリアル(重要鉱物・部素材)、港湾ロジスティクス、防衛産業、情報通信、海洋。

(注2)業務プロセスをソフトウエアやAIやロボティクスなどを用いて自動化し、効率化やコスト削減を図る技術。ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)やAIによる業務判断支援、製造工程の自動制御などが含まれる。

(注3)災害やサイバー攻撃、供給網断絶などのリスク下でも事業や社会機能を維持・早期回復させるための技術。分散型エネルギー、サイバー防御、サプライチェーン可視化などが含まれる。

(注4)ロボットなどの物理的な身体を通じて現実世界を認識・行動するAIを指す。画像や言語などの情報処理にとどまらず、センサー情報に基づく環境理解や運動制御を統合し、作業支援や自律行動を実現する点が特徴。産業用ロボット、サービスロボット、自動運転などに応用できる。

(松井美樹)

(米国、日本)

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