タイ商務省、輸入原材料への依存を指摘、原産地規則の複雑化を予想

(タイ)

バンコク発

2026年01月20日

タイ商務省・貿易政策戦略事務局(TPSO)は2025年12月3日、特別レポート「FTA競争のリセット:関税ゼロからサプライチェーン戦略へ」(TPSOジャーナル2025年11月号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。

商務省・外交貿易局(DFT)によると、タイのFTA利用率は84%に上る(2024年、注1)。輸出の約5分の1がFTAを利用していないことを意味し、中国や日本、韓国、オーストラリア、ペルー向けは90%を超える一方、ASEANやインド、ニュージーランド向けは80%を下回るという。

TPSOは、FTAの未活用について、関税メリットを上回る原産地規則の順守コスト(ROOコスト)に直面する中小企業が多いと指摘。中小企業のROOコストは5.3~8.2%に及ぶとの分析を紹介。コストの内訳としては、原材料の検証(2~3.5%)や原産地証明書の作成(1.5~2%)、法律相談(1~1.5%)、人件費(0.8~1.2%)の順に多い。その結果、多くの事業者は、特に最恵国待遇(MFN)税率が5%を下回る場合、FTA利用より関税を支払うことを選択するとしている。

さらに、タイの輸出製品の半分は、輸入原材料に依存していると指摘。特に、中国と日本、韓国、台湾からの輸入が多い。プーイ・ウンパコーン経済研究所の分析PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を基に、セクター別に外国製原材料の付加価値(注2)の割合が高い輸出品目を見ると、自動車・同部品(44.7%)、電子機器・同部品(32.8%)、機械・同部品(31%)、繊維・衣料・皮革製品(27%)、食品・飲料・たばこ(17.0%)において、輸入依存度が高い。

TPSOは、将来の貿易協定において、半導体や電気自動車(EV)バッテリー、太陽光パネル、医療関連などの戦略物資に対して、より厳格で複雑なROOが課されると予想した。また、FTAパートナー以外の国・地域が、タイの原産地証明を得るために、最低限の作業(単純な組み立てや再梱包など)のみを行うことを防ぐため、迂回措置が適用されるとの見方を示した。タイの事業者は、実質的な国内生産を行い、相応の付加価値を生み出しているとの証明が不可欠になるとしている。

スパジー・スタンパン商務相は、「貿易交渉は、相手国がポテンシャルを持つ産業に焦点を当てたものに移行していくべき」と述べた。また、地政学の変化と新しい国際秩序は、貿易にゆがみをもたらしているが、タイにとっては、貿易相手の多元化という機会を提供しているとコメントしている。

(注1)利用率:DFTが、タイからFTA加盟国向けの輸出額に占める、実際にFTAを利用した輸出額の割合を算出したもの(2024年)。実際にFTAを利用した額とは、DFTが原産地証明書(C/O)を発行した輸出を意味する。

(注2)UNCTADデータベースを基に、タイからの輸出のうち、他国で生産された付加価値(中間財など)が占める割合で計算されたもの。

(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ)

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