2025年の世界の直接投資は14%増、データセンターや半導体で大型案件が集中、UNCTAD報告

(世界、米国、中国、インド、フランス、アラブ首長国連邦、ブラジル、メキシコ)

調査部国際経済課

2026年01月22日

国連貿易開発会議(UNCTAD)は1月20日に発表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2025年の世界の対内直接投資(FDI)額が前年比14%増の約1兆6,000億ドルに達したと推計した(注1、添付資料表1参照)。ただし、海外直接投資上の優遇税制を有するいわゆる導管(conduit)国・地域を経由したFDI(注2)を除くと、実質的な増加は約5%程度にとどまると指摘している。

FDIの受け入れ地域別では、先進国・地域が前年比43%増と大幅に回復し、世界の直接投資受け入れ額の55%を占める新興・途上国・地域は2%減と弱含んだ。

先進国・地域では、EU(56%増)を中心にクロスボーダーM&A取引が回復し、ドイツ、フランス、イタリアなど主要国で流入が増加した。米国は2%増にとどまったが、世界最大のFDI受け入れ国としての地位を維持した。日本製鉄によるUSスチールの138億ドルでの買収や、半導体や通信分野でのクロスボーダーM&A増加が寄与した。

新興・途上国・地域では、中南米・カリブ地域が22%増となり、ブラジルは再生可能エネルギー(再エネ)やグリーン関連投資を背景に42%増、メキシコは輸出型製造業を中心に16%増だった。インド(72%増)、タイ(35%増)、トルコ(29%増)でも力強い成長が見られた。インドでは、グローバルサプライチェーンの一部に組み込まれることを目指した国内誘致政策が奏功し、金融、IT、研究開発(R&D)のほか、製造業が対内FDIを牽引した。他方、中国の対内FDIは前年比8%減となり、3年連続で減少した。

2025年の世界の対内直接投資を形態別にみると、クロスボーダーM&Aは総額で前年比10%減と引き続き低調で、国内M&Aが活発だった一方、国境を越える取引は伸び悩んだ(添付資料表2参照)。国際プロジェクトファイナンス(IPF、注3)は4年連続の減少となり、金額ベースで16%減、件数ベースで12%減となった。特に再エネ向け大型案件が鈍化し、投資家は経済・地政学的な不確実性の継続を背景に慎重姿勢を強めた。一方で、グリーンフィールド投資(発表ベース)は件数こそ16%減少したものの、データセンターや半導体など少数の大型案件が総額を支え、金額ベースでは前年並みの高水準を維持した(添付資料表3参照)。

業種別では、データセンター(2,700億ドル)が最大の投資対象として浮上し、世界のグリーンフィールド投資総額の2割超を占めた。主な受け入れ国には、フランス、米国、韓国に加え、ブラジル、タイ、インド、マレーシアといった新興国・地域も並ぶ。大型案件としては、フランスでアラブ首長国連邦(UAE)のMGXが430億ドル規模のAI(人工知能)キャンパス設立を発表した。AI技術競争の激化に伴い、独自インフラの重要性が一段と高まっている。また、半導体分野は件数ベースでは前年比7%減も、総額は35%増となり、台湾のTSMCによる米国での複数の新工場建設計画が象徴的だ。他方、再エネ向け投資は金額ベースで28%減となった。繊維、電子機器、自動車、機械などの「グローバルバリューチェーン集約型産業(注4)」は、件数ベースで25%減と急減し、地政学リスクや関税不確実性の高まりが影響した。

UNCTADは、2026年の世界のFDIについて、主要国での金利低下やクロスボーダーM&Aの増加が支える、緩やかな増加の可能性を示した。一方、地政学的緊張や経済の分断、地域紛争などの下振れリスクにより、プロジェクト数は限定的な伸びにとどまる可能性を指摘している。特に、実プロジェクトでは低調なまま、データセンターや半導体といった特定分野への投資集中が続き、地理的・産業的偏在が拡大する見通しだとしている。

(注1)UNCTADは130カ国・地域から収集した2025年第1~3四半期(1~9月)のFDIデータを基に、2025年通年値を推計している。当該130カ国・地域は世界の直接投資額(ストック)の95%を占めている。

(注2)多国籍企業が税負担の軽減などを目的に海外直接投資を行う場合に、欧州や中南米などの優遇税制を有する国・地域を介するケース。

(注3)資金調達方法にかかわらず、少なくとも1社の海外投資家が出資するプロジェクトを指す。グリーンフィールド投資(クロスボーダー)やクロスボーダーM&Aともそれぞれ重複する部分がある。

(注4)製品やサービスの生産工程が複数の国に分散され、国際的なサプライチェーンの中で高度に統合されている繊維、電子機器、自動車、機械産業などのこと。

(馬場安里紗)

(世界、米国、中国、インド、フランス、アラブ首長国連邦、ブラジル、メキシコ)

ビジネス短信 e97a58dd5f0fc70b