米最大規模の小売り展示会がニューヨークで開催、AI活用は実用段階へ完全移行

(米国)

ニューヨーク発

2026年01月22日

全米小売業協会(NRF)が主催する米国最大規模の国際小売り展示会「リテールズ・ビッグ・ショー2026外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が、11113日にニューヨーク(NY)市内で開催された。各報道によると、来場者数は例年並みの約4万人、1,000社超が出展した。

2026年のテーマは「The Next Now(次なる今)」が掲げられ、未来のトレンドへの備え以上に、今取り組むべき課題解決にテクノロジーを活用する重要性が強調された。2025年の展示会では、小売業のゲームチェンジャーとして人工知能(AI)が注目されたが、今回は実験段階ではなく、実用フェーズへと移行していることが示された。店舗やサプライチェーンの各現場で、ダイナミック・プライシング(注1)を含むリアルタイムの意思決定や在庫・需要予測に活用されており、AIは小売業の不可欠な運営基盤となっている。

2026年の新たな試みとして新設された「AIステージ」では、技術の理論よりも現場での実装に焦点が当てられた。小売り大手ウォルマートや百貨店メイシーズなどの幹部が登壇し、AIを導入する際の実際の失敗談や、現場で働く従業員の生産性を向上させるための具体的な活用例を共有した。特にAIが自律的に判断してタスクを実行する「エージェント型AI」が導入され、実務代行としての機能を果たしていることが注目され、これまでのAIとの決定的な違いであることが強調された。展示会場でも、ネット小売りのアマゾンや顧客管理ソフト大手セールスフォースなど、あらゆるブースで事業におけるエージェント型AIを活用する先端技術のソリューションが展示された。

写真 エージェント型AIサービスを展示するアマゾンのブース(ジェトロ撮影)

エージェント型AIサービスを展示するアマゾンのブース(ジェトロ撮影)

本イベントで注目された展示の1つが、フードサービス・イノベーションゾーン内に設置された体験型デモ「ザ・ピット・ストップ」だ。参加者はゴーカートに乗り込み、AI音声注文や自動決済、ロボットによる商品提供といった次世代型のドライブスルーを模擬的に体験できる場が設けられた。複数の先端技術を統合させたシステム構成では自動化を極限まで追求し、今後の小売業界における新たな顧客体験の象徴となるモデルを提示した。

写真 未来型のドライブスルーを描いた「ザ・ピット・ストップ」の展示エリア(ジェトロ撮影)

未来型のドライブスルーを描いた「ザ・ピット・ストップ」の展示エリア(ジェトロ撮影)

プレスおよびアナリスト向けのセッションでは、NRFのチーフエコノミスト、マーク・マシューズ氏らが登壇し、米国経済の現状と今後の展望について議論を行った。マシューズ氏は、2025年の年末商戦期間の売上高が前年同期比4.1%とNRFの予測の上限に近い結果になったとし、消費は底堅く推移していると評価した。また、2025年に成立した「大きく美しい1つの法案(OBBBA)法」による個人向け減税の還付金や利下げの効果が消費を押し上げるプラス要因になり、2026年は、K字型消費の二極化傾向がやや緩和される見通しだと述べた。現在進んでいるAIへの投資が、ドットコム・バブル(注2)時を上回る規模で普及が進んでおり、これが長期的な生産性向上と経済成長の追い風になると予想した。

(注1)商品やサービスの価格を、需要と供給のバランスや販売時期、天候などの要因に基づいてリアルタイムで変動させる価格戦略。

(注2)1990年代前半から2000年代初めにかけて、米国株式市場中心にインターネット関連企業の株式が実態を伴わない異常な高値になったことを指す。

(樫葉さくら)

(米国)

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